脳卒中後歩行障害に対する中殿筋への電気刺激-予備研究-

つづいて当研究会メンバーである和歌山国際厚生学院 福井直樹先生の研究報告。

福井先生は現在,脳卒中後の歩行障害に対する中殿筋への電気刺激の効果を検証しようとされておられます。とある疫学データでは脳卒中患者の約35%が下肢運動麻痺から実用的な機能まで回復することができず,20~25%の患者が物理的な介助なしでは歩行することができないとされており,脳卒中後歩行障害の改善は我々理学療法士にとっても大きな命題の一つです。脳卒中患者さんの歩行障害の原因はさまざまですが,より生活に密着した問題となりうるのが歩行速度の低下や安全性の低下です。中でも股関節外転筋の活動の低下は麻痺側下肢の立脚期の安定性に大きな影響を与え,非対称性の主な原因となったり,歩行速度との関連が指摘されています。一般的に,電気刺激は下垂足drop footを改善する目的で前頚骨筋(あるいは総腓骨神経)に実施される場合が多く,本邦のガイドラインやEBRSR(http://www.kio.ac.jp/~a.matsuo/:日本語版)でも推奨されていますが,中殿筋に実施している研究はほとんどないのが現状です。しかし,近年までのFES研究を踏まえると中殿筋の筋活動も改善できる可能性が大いに考えられます。

まだ予備的研究の段階ですが,順次良い結果を報告できればと考えております。