pusher behaviorに対する直流前庭刺激

「あらゆる姿勢で麻痺側へ傾斜し、自らの非麻痺側上下肢を使用して、床や座面を押して、正中にしようとする他者の介助に抵抗する」(Davies, 1985)

これまた理学療法の永遠のテーマであるPusher syndrome,Contraversive pushing,pusher behaviour(PB)であります。急性期症状で3か月以内に消失するものが多いとされ,予後はよいとされていますが,臨床では残存する方も多く経験するところです。PBの存在は予後を悪化させるという報告があります。右半球損傷者が重症化しやすく,病巣は右半球では視床後部,島皮質,中心後回,下前頭回,中側頭回,下頭頂小葉などが関連するとされています。そのメカニズムは,身体軸の偏位,自覚的視性垂直位SVVの偏位,空間無視の存在,視覚、前庭覚、体性覚とは異なるsecond graviceptive systemの存在など多要因であります。その中で,前庭機能と関連するという報告があり,われわれはここに注目しています。前庭刺激には頭部の位置変化や姿勢変化などのほかにカロリック刺激やGVSなどがあります。GVSは非侵襲的に容易にかつ意図する方向への前庭系への調整が可能です。GVSによりSVVを操作することも可能とされており,PB患者の治療に応用できる可能性があります。まだまだ問題は山積みですが,数例に実施したところいい印象で患者さんの受け入れも悪くなく,今年の全国学会ではその一部を発表できるかと思います。ここ何十年とPBの治療に大きな変化はありません。GVS単独ではなく,その前庭刺激作用を上手く利用して効果的な理学療法につなげることができればと考えております。

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