ガンのリハビリテーションにおける電気刺激の有用性

J Pain Symptom Manage. 2009 Dec;38(6):950-6. doi: 10.1016/j.jpainsymman.2009.05.011.

Randomized controlled pilot study of neuromuscular electrical stimulation of the quadriceps in patients with non-small cell lung cancer.

 
これも先月の内容です。肺がん患者さんへのNMESの予備的研究。非小細胞肺がん患者(NSCLC)は筋委縮と筋力低下を示し、この変化はQOLを低下させる可能性があります。がん治療は疲労から活動量を低下させ、さらなる筋力低下を生じさせます。これに対し、効果的な治療はなく、新しいアプローチが必要とされています。
それらを改善する一つの方法として運動療法がありますが、運動プログラムを完遂できるがん患者は約半分であるとされています。さらに息切れや軽い運動で疲労を訴える患者は歩行や自転車トレーニングなどは非常に厳しいかもしれません。
これらの問題を回避する一つの方法として大腿四頭筋への電気刺激(NMES)があります。NMESはホームエクササイズで可能なためライフスタイルの変化を必要とせず、受動的な介入であるため、従来の運動より少ないモチベーションで実施可能です。
本研究では群間差は出ていませんでしたが、NMES群の方がより筋力や身体活動が改善する傾向にあり、一番大きなことは、重篤な有害事象は報告されなかったことかと思います。初回の治療後、3人がわずかな筋肉の不快感を訴えたそうですが、治療終了後は“階段昇降が楽になった”“立ち上がりが容易になった”“歩行時の下肢がしっかりしている”といった肯定的な感想があり、すべての患者が再び電気を使用したいと述べていたそうです。
理学療法は様々な疾病により障害が生じた患者さんにADL,QOL向上のため様々なアプローチを駆使します。この電気刺激は我々理学療法士が専門とする大切なツールの一つだと思います。電気刺激や神経生理学などの正しい知識を身に着け、より多くの患者さんを少しでもよりよい結果に導くため物理療法の可能性を探る努力を続けたいと思っています。