人工透析実施慢性腎不全患者に対する運動療法 物理療法の可能性

J Am Soc Nephrol. 2007 May;18(5):1594-601. Epub 2007 Apr 4.

Progressive exercise for anabolism in kidney disease (PEAK): a randomized, controlled trial of resistance training during hemodialysis.

Am J Nephrol. 2005 Jul-Aug;25(4):352-64. Epub 2005 Jul 22.

Exercise training in patients receiving maintenance hemodialysis: a systematic review of clinical trials.

本日は和歌山国際厚生学院の北裏先生による人工透析治療を受けておられる慢性腎不全患者の運動療法についてレビューしていただきました。腎不全患者さんの骨格筋萎縮は予後予測においても重要な指標であり、アシドーシスやprotein-energy malnutrition(PEM:骨格筋などの体構成蛋白の減少と血清蛋白成分の減少を伴う栄養障害),内科的合併症,副腎皮質ステロイドの使用,加齢,酸化ストレス,透析治療,活動性低下など,すべての要因が筋線維の減少や萎縮,筋肉内脂質の産生に著しく影響しているとされています。当然ながら、この筋萎縮は活動や参加レベルに影響するのはもちろんのこと、生命予後にさえ強くかかわるとされています。長年、重度腎不全や透析患者において運動療法は禁忌とされていましたが、筋力増強や持久力練習といった運動療法の有効性は数多く示されています。しかしながら、臨床ではリスクが高く、またコンプライアンス、アドヒアランスの問題もあり、実際臨床に浸透していないのが実情です。

理学療法においても、必要度は高いにもかかわらず腎不全という疾患別リハは算定できません。そのため、各施設で工夫されながらリハビリテーションが提供されています。

この現状を打開すべく、我々は有効な理学療法を提示していく必要があります。そこで、着目しているのが「電気刺激」です。海外では数本透析中の電気刺激療法が実施されています。筋力増強効果や透析効率の向上など様々なポジティブな結果が報告されています。この電気刺激の最大のメリットは安全かつアドヒアランスの問題も解決できることだと思います。

現在予備的に研究がスタートしておりますので、順次報告して参りたいと存じます。