透析中の物理療法の可能性

透析中よく問題になるのが透析中の低血圧です.透析前,中,後の低血圧は生命予後に大きく影響を及ぼすとされております(Shoji,2004).透析中低血圧を予防するために様々な物理療法が用いられています.代表的なものに空気圧マッサージ(ハドマー,メドマー等)があります.これらは下肢圧迫により静脈還流を促すことで血圧を増大させるという試み(スターリングの法則)です.しかしながら,先行研究では相反するエビデンスが報告されており,未だその効果は不明です.

 

他のモダリティーはどういったものがあるのでしょうか?理論的に有効だと考えられるのはもちろん電気刺激です.下腿三頭筋への電気刺激により筋ポンプ作用を利用して静脈還流を促すという方法です.この方法はDVTの予防など古くから実施されておりましたが(高取ら,2003,http://ci.nii.ac.jp/naid/110003993177),近年透析中における応用が試みられています.

 

下肢に対する電気刺激にて循環動態がどう変わるか,この視点では先ほどのDVT含め,心疾患,末梢動脈疾患など様々な疾患に応用されています.

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23312939

J Vasc Surg. 2013 Mar;57(3):714-9.
Calf muscle stimulation with the Veinoplus device results in a significant increase in lower limb inflow without generating limb ischemia or pain in patients with peripheral artery disease.
Abraham P, Mateus V, Bieuzen F, Ouedraogo N, Cisse F, Leftheriotis G.

この研究は,腓腹筋への電気刺激が,末梢血管疾患PAD患者の動脈血流と組織酸素含有量への効果を検証しています.結果,筋虚血または疼痛を誘発せずに動脈血流を有意に増大させたと報告されています.しかし,PAD患者の歩行量改善の補助的な治療手段として使用できるかはまだ明らかではありません.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19169019

Blood Purif. 2009;27(1):58-63.
Enhancing hemodialysis efficacy through neuromuscular stimulation.
Madhavan G, Nemcek MA, Martinez DG, McLeod KJ.

この報告では下腿三頭筋に周波数45Hzにて電気刺激を8週間実施しており,透析中に除水率の改善と血圧降下の緩徐に寄与した可能性を示しています.

 

当研究会の北裏真己,吉田陽亮は透析患者への電気刺激療法の予備的研究を実施しております.予備的研究では健常者に対する下肢への10分間の電気刺激にて有意な血圧の増大,一回拍出量の増大を確認しました.今後,透析中の低血圧予防と身体機能改善に対するリハビリテーションの実現に向けて,症例への実施例を含め逐次ご報告できればと考えております.

 

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全人工置換術後の神経筋電気刺激NMES

Eur J Phys Rehabil Med. 2013 Dec;49(6):909-20. Epub 2013 Nov 28.

Neuromuscular electrical stimulation after total joint arthroplasty: a critical review of recent controlled studies.

 
NMESはTKA後の大腿四頭筋の筋力増強手段として使用されています。その目的は、大腿四頭筋の随意的な活性化が不十分な患者に十分な訓練量を提供すること、筋力増強を促通すると考えられている神経生理学的メカニズムを関与させること、大腿四頭筋の神経筋システムに一般的な物理的ストレスを与えることです。その主な目的は,TKA直後に特徴的に起こる回復しにくい急激な筋力低下を軽減させることです。
 近年、NMESは臨床研究、RCT、Cochrane reviewで注目されており、TKA患者の大腿四頭筋の筋力と身体能力の改善に関して、NMESの総合的な効果には相反するエビデンスが存在すると報告されています。しかし、介入パラメーター(使用方法、強度、時間、術後の時期)が研究間で異なっています。このレビューの目的は、TKA後の大腿四頭筋の回復の時間経過について、NMESの生理学的メカニズムを背景において、最近の臨床研究を批判的に評価することでした。
TKA後の多くの患者は、疼痛と自己報告による機能は劇的に改善するが、客観的な身体能力の障害が残存する。健常高齢者と比較して、TKA後6ヶ月でTUGは63%遅くなり、階段昇降速度は104%遅くなる。
 TKAは手術直後に急激な大腿四頭筋の筋力低下を引き起こすことが特徴的です。術後1ヶ月で大腿四頭筋の筋力低下は50~60%低下し、多くの患者で術前のレベルまで回復しないことがエビデンスで示されています。
 比較的健康な高齢者において、術後6~13年経過しても大腿四頭筋の筋力低下は残存していると示されています。また,大腿四頭筋の機能障害は、歩行速度の低下、バランス障害、起立動作能力の低下と関連し、転倒リスクを増やすとされてます。つまり、大腿四頭筋の筋力低下は、身体の健康や自立した生活を送る上で重要なアウトカムに直接的に影響を与える可能性が高いので
す。
近年の研究により,TKA後の筋力低下は主に①筋性,②神経性の要因で生じており,特にTKA後は神経性要因によるものが強く,その後廃用性筋萎縮に移行すると考えられております.そのため,大腿四頭筋筋力低下に対する治療戦略には,神経系の回復に着目すべきであり,NMESが活用できるというわけです.
 
近年4つのRCT研究があり,それぞれ考察されております.

Comparing conventional physical therapy rehabilitation with neuromuscular electrical stimulation after TKA.

Levine M, McElroy K, Stakich V, Cicco J.

Orthopedics. 2013 Mar;36(3):e319-24.

 

Early neuromuscular electrical stimulation to improve quadriceps muscle strength after total knee arthroplasty: a randomized controlled trial.

Stevens-Lapsley JE, Balter JE, Wolfe P, Eckhoff DG, Kohrt WM.

Phys Ther. 2012 Feb;92(2):210-26.

 

Improved function from progressive strengthening interventions after total knee arthroplasty: a randomized clinical trial with an imbedded prospective cohort.

Petterson SC, Mizner RL, Stevens JE, Raisis L, Bodenstab A, Newcomb W, Snyder-Mackler L.

Arthritis Rheum. 2009 Feb 15;61(2):174-83.

 

Does electric stimulation of the vastus medialis muscle influence rehabilitation after total knee replacement?

Avramidis K, Karachalios T, Popotonasios K, Sacorafas D, Papathanasiades AA, Malizos KN.

Orthopedics. 2011 Mar 11;34(3):175.

 

以上の4つの研究から要点をまとめると

  • NMESはTKA後早期に実施すべきである
  • 治療効果を高めるには高頻度のNMESが必要かもしれない
  • 筋力増強には高強度のNMESが必要かもしれない
  • NMESは監視下の練習に付加するものとして最も効果的である

 

NMESのメリットは

1)患者は、適切な強度で随意的な筋力増強訓練ができない術直後に随意収縮の障害を呈している。

2)NMESは自己管理でき、毎日効果的に実施できる。

3)NMESは適切な用量にて、筋力、身体機能、健康面で劇的かつ持続的な改善をもたらす

こととまとめられています.

 

我々の研究会でも,TKA後,ACL後の筋力増強にNMESを付加する研究を実施しております.大和橿原病院の吉田先生らによる研究において,TKA後感覚刺激NMESにおいても刺激なし群と比較して術後有意な筋力の改善を認めております(日本物理療法学会会誌,in press)

この感覚刺激は上記研究のNMESよりも痛みが少ない(ほぼない)ため,患者さんの受け入れがよく,コンプライアンスを高める方法としてはアリなのではと考えております.

研究成果は順次HPにアップしてまいります.

 

 

 

 
 
 
 
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脳卒中後肩の痛みに関する文献レビュー

NeuroRehabilitation. 2012;30(2):153-65.

Towards a mechanism-based view on post-stroke shoulder pain: theoretical considerations and clinical implications.

Roosink M, Renzenbrink GJ, Geurts AC, Ijzerman MJ.

 

激務で勉強会内容のご報告がおろそかになってしまい,申し訳ございません.激務はただの言い訳です.今年は復習もかねてしっかりアップしたいと思います.

 

というわけで,新年一発目.健常者に対するGVSと肩の痛みに関するレビューです.GVSはマニアックすぎるのでもう少しまとまってから報告いたします.

 

オランダの研究者Roosink氏によるレビューとここ五年の脳卒中後肩の痛み(post-stroke shoulder pain: PSSP)についてレビューしました.以下に要点を書きます.

 

 

•現在のところ,Post-stroke shoulder pain(PSSP)のメカニズムの理解について未だ明確ではない

•理論的に,PSSPは侵害受容性,または中枢性神経因性疼痛かその両方であるとされる

•加えて,PSSPの始まりの責任機構はそれが持続する機構と異なるかもしれない

•この関係は脳卒中後疼痛の診断と治療の関係に問題を投げかける

•しかし,PSSPにおいて報告されたそれぞれの症例は単に脳損傷や上肢の軟部組織の損傷がPSSPの患者の主要な要因を占めていると考えられている

•軟部組織損傷は患者自身による管理の不足に組み合わさって脳卒中後の神経筋制御の低下によって生じる可能性があり,結果として体性感覚や認知機能の障害も認める

•上肢の運動障害は多くの日常生活を遂行するために運動の自由度が多く,そのため損傷する傾向にある

•そして,外傷はたびたび,反復する微細な,あるいは持続的な微細損傷によって軟部組織損傷が生じる

•加えて,不活動の長期化や代償の使用,痛みによる非正常な運動パターン,運動制御の低下は結果として痛みを侵害疼痛の進行に寄与する

•長期的な侵害受容は脊髄と上脊髄ニューロンレベルの両方で構造的再構成を生成する.

•感作が永続的になるように無害の刺激でさえ痛みになる

•加えて持続的な侵害受容(刺激?)はDNICの永続的活性化につながる可能性があり,結果として内因性抑制が無効になる

•脳卒中後中枢性疼痛は脳卒中による感覚入力の欠如が直接的な抑制の欠如,もしくは増大した上脊髄侵害受容の促通によるものである可能性がある

•一方で,脳損傷は脊髄侵害受容の促通もしくは脱抑制を引き起こす.また,情動や認知や自律神経の変化も生じさせる

•認知(注意)や情動(不安)は二次的な慢性疼痛に移行させる可能性があり,結果として患者の社会環境(対人関係)の変化を引き起こし,疼痛行動の増加やPSSPの持続に寄与する

 

この病態を示すわかりやすいモデル図がこの文献には提示されています.

リハ介入は不使用,無視,感覚障害,運動麻痺,情動,自律神経系,麻痺側の管理,早期の鎮痛などどのあたりに介入すべきかをわかりやすく解説してくれています.各病期によっても病因が異なってくることも注目すべきことだと思います.

 

その他の文献もレビューしましたのでご参考までに.

 

Stroke. 2007 Feb;38(2):343-8.  

Shoulder pain after stroke: a prospective population-based study.

Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, Lindgren A.

 

 

Eur Neurol. 2011;66(3):175-81.

Enhanced-MRI and ultrasound evaluation of painful shoulder in patients after stroke: a pilot study.

Pompa A, Clemenzi A, Troisi E, Di Mario M, Tonini A, Pace L, Casillo P, Cuccaro A, Grasso MG.

 

 

J Rehabil Med. 2012 Jun 7;44(7):553-7. 

Sonography and physical findings in stroke patients with hemiplegic shoulders: a longitudinal study. 

Pong YP, Wang LY, Huang YC, Leong CP, Liaw MY, Chen HY.

 

 

J Physiother. 2013 Dec;59(4):245-54.

Combined arm stretch positioning and neuromuscular electrical stimulation during rehabilitation does not improve range of motion, shoulder pain or function in patients after stroke: a randomised trial.

de Jong LD, Dijkstra PU, Gerritsen J, Geurts AC, Postema K.

 

 

ClinRehabil. 2012 Sep;26(9):807-16.

Functional orthosis in shoulder joint subluxation after ischaemic brain stroke to avoid post-hemiplegic shoulder-hand syndrome: a randomized clinical trial.

Hartwig M, Gelbrich G, Griewing B.

 

 

Stroke. 2013 Nov;44(11):3136-41. 

Suprascapular nerve block for shoulder pain in the first year after stroke: a randomized controlled trial.

Adey-Wakeling Z, Crotty M, Shanahan EM.

 

 

 

当院でも5年間のカルテから肩の痛みの有病率を算出しましたが,約38%と先行研究とよく似た結果になりました.かといって明確な介入ができていないのが現状です.肩の痛みはその後の機能予後やQOLに影響を与え,メンタル面にも大きな影響を及ぼします.脳卒中患者さんの主要な問題点の一つですが,これといってまだ決定打がありません.何とかこの問題を解決すべく研究を続けていきたいと思います.

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脳卒中後運動障害に対するFES

現在、FES(機能的電気刺激)は脳卒中患者の運動障害の改善に用いられています。元々はFESはあくまで機能再建として用いられていました。いわゆる補装具と同類と考えらえ、神経補綴

neuroprosthesisとも表現されます。しかしながら、脳の可塑性変化やFESの治療的効果が確認されるとともに、徐々に治療的な使用としてのFESが多く用いられるようになってきました。

すでにFESがFESでなくなってきており(笑)、NMESやTESなど用語の統一を図るべきかもしれません。

話はそれましたが、テクノロジーの進化に伴いFESも劇的に変化してきてます。個人的には、機器の発達と病態のメカニズムの解明、効果の生理学的メカニズム、臨床現場の現実的問題それらがうまくかみ合っていない印象を受けます。我々は理学療法士という立場から実際の臨床の問題点や患者さんの声を聞いて、それを解決する研究を実施しなくてはなりません。その視点を大切にし、今既存のFESを用いて様々な可能性を調査しています。まだまだ問題点は山積みですが、いずれ必ずや臨床現場で活きるFESの報告をしていきたいと思います。

 

今回小嶌先生がレビューした論文です。ご参考までに。

Neurorehabil Neural Repair. 2012 Mar-Apr;26(3):239-46.

Contralaterally controlled functional electrical stimulation for upper extremity hemiplegia: an early-phase randomized clinical trial in subacute stroke patients.

Knutson JS, Harley MY, Hisel TZ, Hogan SD, Maloney MM, Chae J.

 

Neurorehabil Neural Repair. 2009 May;23(4):357-65.

Bilateral upper limb training with functional electric stimulation in patients with chronic stroke.

Chan MK, Tong RK, Chung KY.

 

Arch Phys Med Rehabil. 2007 Jul;88(7):833-9.

Upper-extremity functional electric stimulation-assisted exercises on a workstation in the subacute phase of stroke recovery.

Kowalczewski J, Gritsenko V, Ashworth N, Ellaway P, Prochazka A.

 

Neurorehabil Neural Repair. 2007 May-Jun;21(3):207-15.

Functional electrical stimulation enhancement of upper extremity functional recovery during stroke rehabilitation: a pilot study.

Alon G, Levitt AF, McCarthy PA.

 

Stroke. 2010 Apr;41(4):821-4.

Dose-response relation between neuromuscular electrical stimulation and upper-extremity function in patients with stroke.

Hsu SS, Hu MH, Wang YH, Yip PK, Chiu JW, Hsieh CL.

 

Neurorehabil Neural Repair. 2011 Nov-Dec;25(9):830-7.

Effectiveness of hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation therapy in patients with subacute stroke: a randomized controlled pilot trial.

Shindo K, Fujiwara T, Hara J, Oba H, Hotta F, Tsuji T, Hase K, Liu M.

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大腿骨骨折後Mobilityトレーニング

Mobility training after hip fracture: a randomised controlled trial.

Moseley AM, Sherrington C, Lord SR, Barraclough E, St George RJ, Cameron ID.

Age Ageing. 2009 Jan;38(1):74-80.

 

今月の英文抄読は大規模なRCTです。

股関節骨折後の異なる二つのエクササイズプログラムの効果を評価者ブラインドRCTにて比較しています。対象は股関節骨折のため外科的固定実施後、入院リハビリテーションに移行した160名です。
他のリハビリテーション戦略に付加して、介入群は立位での多量(higher dose)のエクササイズを受け、比較対照群は座位もしくは背臥位での少量(lower dose)のエクササイズを受けています。
一次アウトカムメジャーは骨折側の膝伸展筋力と歩行速度であり、介入後およびフォローアップに群間差を認めませんでした。しかし、サブグループ解析では認知症を合併する患者において多量群がより大きな改善を示しました。

本邦でも大腿骨骨折後のリハビリテーションは最も重要なテーマの一つです。しかしながら、有効とされるリハビリテーション介入のエビデンスは依然乏しいのが現状です。医療費抑制の渦中、急性期病院における入院期間はどんどん減少し、術後のリハビリテーションはその根本から変革しなければならない時期にきていると思います。そんな中、物理療法が活躍できる要素は多分にあると考えております。

我々は急性期から回復期にかけて、いかに廃用症候群を予防するか、筋力および痛みを改善させるか、ADLを早期に改善し、QOLの向上を図るか、その一つの補助ツールとして電気刺激の応用を試みております。結果は順次報告していきたいと思います。

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ガンのリハビリテーションにおける電気刺激の有用性

J Pain Symptom Manage. 2009 Dec;38(6):950-6. doi: 10.1016/j.jpainsymman.2009.05.011.

Randomized controlled pilot study of neuromuscular electrical stimulation of the quadriceps in patients with non-small cell lung cancer.

 
これも先月の内容です。肺がん患者さんへのNMESの予備的研究。非小細胞肺がん患者(NSCLC)は筋委縮と筋力低下を示し、この変化はQOLを低下させる可能性があります。がん治療は疲労から活動量を低下させ、さらなる筋力低下を生じさせます。これに対し、効果的な治療はなく、新しいアプローチが必要とされています。
それらを改善する一つの方法として運動療法がありますが、運動プログラムを完遂できるがん患者は約半分であるとされています。さらに息切れや軽い運動で疲労を訴える患者は歩行や自転車トレーニングなどは非常に厳しいかもしれません。
これらの問題を回避する一つの方法として大腿四頭筋への電気刺激(NMES)があります。NMESはホームエクササイズで可能なためライフスタイルの変化を必要とせず、受動的な介入であるため、従来の運動より少ないモチベーションで実施可能です。
本研究では群間差は出ていませんでしたが、NMES群の方がより筋力や身体活動が改善する傾向にあり、一番大きなことは、重篤な有害事象は報告されなかったことかと思います。初回の治療後、3人がわずかな筋肉の不快感を訴えたそうですが、治療終了後は“階段昇降が楽になった”“立ち上がりが容易になった”“歩行時の下肢がしっかりしている”といった肯定的な感想があり、すべての患者が再び電気を使用したいと述べていたそうです。
理学療法は様々な疾病により障害が生じた患者さんにADL,QOL向上のため様々なアプローチを駆使します。この電気刺激は我々理学療法士が専門とする大切なツールの一つだと思います。電気刺激や神経生理学などの正しい知識を身に着け、より多くの患者さんを少しでもよりよい結果に導くため物理療法の可能性を探る努力を続けたいと思っています。
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ACL再建術後のリハに電気刺激を付加しよう!!

Am J Sports Med. 2011 Jun;39(6):1238-47. doi: 10.1177/0363546510396180. Epub 2011 Feb 22.

The effectiveness of supplementing a standard rehabilitation program with superimposed neuromuscular electrical stimulation after anterior cruciate ligament reconstruction: a prospective, randomized, single-blind study.

 
これは先月の資料です。激務でアップするのが遅れました・・・すみません。
ACL再建術後リハビリテーションにおいて,神経筋電気刺激(NMES)は,筋力低下を抑え,従来の治療の補助的手段として役立つかどうかを調べた報告です。対象は標準リハビリテーションプログラムを完了した患者96名で、伝統的な神経筋電気刺激(Polystim群)と新しい衣類に統合した神経筋電気刺激群(Kneehab群)と術後標準リハビリテーションプログラムのみの群(Control群)とで効果を比較しております.2つのNMES群は,1回20分,3回/日,5日/週,12週間のNMESを実施し,さらに等尺性随意収縮を重畳しました.術側・非術側共に,等速性膝伸展筋力と機能パフォーマンスを術前,術後6週目,12週目,6ヵ月目に評価しました.結果、Kneehab群では,Polystim群とControl群より全ての期間で等速性膝伸展筋力の有意な改善を示し、Kneehab群の片足ジャンプは,術後6週~6ヵ月で50%改善されたのに対し,Polystim群26.3%とControl群26.2%でした。Tegner scoreとInternational Knee Documentation Committee 2000 knee examination scoreには有意差はありませんでしたが,Kneehab群は,Lysholm scoreが術前より有意な改善を示しました.
非常に興味深い報告で、TKA術後の電気刺激も以前この研究会でも触れましたが、現在大和橿原病院の吉田先生中心にACL研究もスタートしております。電気刺激はうまく利用することで、従来の筋力増強に付加的価値を加えることが可能です。電気刺激により中枢性筋力増強が期待できるエビデンスも多数存在し、運動器疾患であってもこの中枢性筋力増強の占める割合が多い場合が多々あります。今後良い結果がでれば順次報告させて頂きたいと思います。
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人工透析実施慢性腎不全患者に対する運動療法 物理療法の可能性

J Am Soc Nephrol. 2007 May;18(5):1594-601. Epub 2007 Apr 4.

Progressive exercise for anabolism in kidney disease (PEAK): a randomized, controlled trial of resistance training during hemodialysis.

Am J Nephrol. 2005 Jul-Aug;25(4):352-64. Epub 2005 Jul 22.

Exercise training in patients receiving maintenance hemodialysis: a systematic review of clinical trials.

本日は和歌山国際厚生学院の北裏先生による人工透析治療を受けておられる慢性腎不全患者の運動療法についてレビューしていただきました。腎不全患者さんの骨格筋萎縮は予後予測においても重要な指標であり、アシドーシスやprotein-energy malnutrition(PEM:骨格筋などの体構成蛋白の減少と血清蛋白成分の減少を伴う栄養障害),内科的合併症,副腎皮質ステロイドの使用,加齢,酸化ストレス,透析治療,活動性低下など,すべての要因が筋線維の減少や萎縮,筋肉内脂質の産生に著しく影響しているとされています。当然ながら、この筋萎縮は活動や参加レベルに影響するのはもちろんのこと、生命予後にさえ強くかかわるとされています。長年、重度腎不全や透析患者において運動療法は禁忌とされていましたが、筋力増強や持久力練習といった運動療法の有効性は数多く示されています。しかしながら、臨床ではリスクが高く、またコンプライアンス、アドヒアランスの問題もあり、実際臨床に浸透していないのが実情です。

理学療法においても、必要度は高いにもかかわらず腎不全という疾患別リハは算定できません。そのため、各施設で工夫されながらリハビリテーションが提供されています。

この現状を打開すべく、我々は有効な理学療法を提示していく必要があります。そこで、着目しているのが「電気刺激」です。海外では数本透析中の電気刺激療法が実施されています。筋力増強効果や透析効率の向上など様々なポジティブな結果が報告されています。この電気刺激の最大のメリットは安全かつアドヒアランスの問題も解決できることだと思います。

現在予備的に研究がスタートしておりますので、順次報告して参りたいと存じます。

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感覚障害に対するtDCS

Clin Neurophysiol. 2008 Apr;119(4):805-11.

Improvement of spatial tactile acuity by transcranial direct current stimulation.

Brain Stimul. 2012 Oct 27.

Transcranial direct current stimulation ameliorates tactile sensory deficit in multiple sclerosis.

新年度一発目は感覚障害に対するtDCSです.脳卒中患者において感覚障害は約1/3にみられ,運動障害単独よりも感覚障害を合併すると機能的自立度が低下することが知られています.近年のシステマティックレビューにおいても脳卒中後感覚障害に対する介入において感覚というImpairmentを改善するにはコレ!という介入報告は少ないのが現状です.近年研究が進んでいる経頭蓋直流刺激tDCSですが,陽極をS1に貼付することで健常者においても感覚(grating orientation taskという課題において)が改善したという報告がなされました.またこれを多発性硬化症患者に応用したのが下2つ目の論文です.この論文でも1日20分2mA,5日間の介入が有意に感覚を改善させたとありました.運動野のみならず感覚野の可塑性変化も生じることは明らかにされており,ラットの髭の切断やヒトにおける四肢切断患者において,その脳地図にリモデリングが生じることが報告されています.我々理学療法士は治療中常に感覚フィードバックを入力しています.なぜなら運動学習には必須だからです.感覚入力方法を上手くデザインすることが学習を促進するうえではかなり重要だといえます.tDCSはその感覚入力による可塑性変化を誘導できる可能性を秘めています.しかしながら,このtDCS未だ研究段階で臨床応用には様々なハードルを乗り越える必要があります.畿央大学健康科学部理学療法学科の松尾篤先生中心にtDCS研究が実施されておりますので,ぜひそちらもご覧ください.
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脳卒中患者の歩行障害に対するDual-channel FESの効果

Clin Interv Aging. 2013;8:271-7.
Dual-channel functional electrical stimulation improvements in speed-based gait classifications.
ScientificWorldJournal. 2012;2012:530906.
Effects of dual-channel functional electrical stimulation on gait performance in patients with hemiparesis.

今回の3本目、Bioness社の新しいFESであるDual-channel FESを用いた予備的な介入研究です。自宅使用での6週間の介入で麻痺側立脚期の割合がまし、歩行速度も向上したとのことです。この機器の詳細は以下のURLをご参照ください。紹介movieも見れます。http://www.bioness.com/L300_Plus_For_Thigh_Weakness.php

本邦ではようやく去年フランスベッドさんが輸入販売を始めておられます。

http://www.francebed.co.jp/brand_site/bioness/index.html

日本製ではOG技研さんとIVES+システムにセンサートリガーモードという簡易のFESシステムが搭載されています。

http://www.og-giken.co.jp/product/physiotherapy/GD611_mode.html

海外ではWalkaideという電気刺激オタクをうならせるこれまた優れたFESシステムがあります。

http://www.walkaide.com/en-US/Pages/default.aspx

にわかに今表面電極制御のFESが盛り上がっております。脳卒中ガイドラインでも推奨されている治療ですが、本邦で使用されている風景はまず見ません・・・。当研究会でも積極的に新たなFESについても研究し、従来の歩行リハビリテーションよりもより効果のある治療法を提案していきたいと考えております。

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二分脊椎症に対する理学療法 電気刺激療法の可能性

本日は大阪の村上整形外科にお勤めの西川先生にお越しいただき,二分脊椎症の理学療法の紹介と研究計画を提示していただきました.私自身二分脊椎症のお子さんは担当させていただいたことがなかったため,(研究会のメンバーもほぼなし)非常に貴重なデータの提示に大変興味深くとても勉強になりました.

二分脊椎症では損傷レベルに応じて獲得できる機能予後がおおよそ決まってくるそうですが,成人の脊髄損傷患者さんとは異なり,乳児期,幼少期の発達過程や成長に合わせての理学療法が独特でまた異なった問題点があるそうです.この病院では700例以上の実績があり,まさに経験に基づく理学療法の神髄を見せていただきました.

二分脊椎症では腹臥位や四つ這いなど十分な発達過程を経験できないことがあるためか,下肢体幹機能の成熟に遅れをとる場合があり,また,継続した筋力強化練習も困難な場合が多く,思うように筋力低下が改善しないことがあるそうです.

そこで,電気刺激を有効活用できないかというご相談をうけました.海外ではいくつか報告がありますが,まだまだ効果は未知数で検討すべき課題は山積しております.

研究会でも十分検討し,皆様に有益な情報を提供できるよう少しずつ臨床応用を進めていけると幸いです.

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大腿骨骨折後大腿四頭筋に対する神経筋電気刺激

Arch Phys Med Rehabil. 2002 Aug;83(8):1087-92.

Neuromuscular stimulation of the quadriceps muscle after hip fracture: a randomized controlled trial.

 
本日2本目は、大腿骨骨折後大腿四頭筋に対する電気刺激のRCTです。層化ランダム化ダブルブラインドのRCTと研究デザインはかなり強者ですが、今一つ電気刺激介入の理論的根拠にかける内容だと感じました。意味のあるポイントとしては、ホームエクササイズ1日3時間を6週間にて高齢者の患者さんでも副作用なく十分実施可能であったこと、6週間介入直後はSHAM(この研究では感覚刺激レベル)よりも運動閾値上刺激群のほうが筋力が改善していたこと(13週後も改善傾向持続も有意差なし)などが挙げられます。また、前ADLよりも回復した症例が電気刺激群に有意に多かったという結果は、シンプルかつ説得力のあるデータでした。
 回復期リハに所属している私ですが、骨折後急性期病院から直接自宅退院される方も多い中、回復期リハにこられる患者さんは超高齢であったり、合併症があったり、家屋や家庭の環境の問題があったりで、何かと問題をお抱えの患者さんが多い印象です。これだけ全国に病院がある中、かつリハビリテーションを提供している中、ciniiで「大腿骨骨折 理学療法」と調べてみるとわずか8件!!しかも、介入研究は1件のみ・・・。総説論文は山ほど引っかかりますが原著はやはり少ないのですね。
 
そんなことを思いながらpubmed surfingしていると面白そうなstudy protocolが!!あたりまえの極々シンプルな介入ですが、我々が当たり前におこなってることも効果のほどは実は科学的にきちんとした手続きで証明されておらず、シンプルなエビデンスを構築していくことも重要だと再認識しました。
 そこでまた原点回帰・・・臨床の問題点をさぐります。外固定術にてやはり多いのが大腿外側の痛み。中々患側立脚期時間が伸びず、歩容の異常は残存。この痛みの原因は?よくいわれる病態はあるのですが、はたして本当にそうなのでしょうか?末梢だけの問題なのか?介入の理論的根拠は?そこに物理療法が生かせる余地があるのか?可能性は・・・・・・あると思います。取り敢えずもう少し情報収集です。
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パーキンソン病患者に対する運動介入の有効性:レビュー

Mov Disord. 2008 Apr 15;23(5):631-40. doi: 10.1002/mds.21922.

The effectiveness of exercise interventions for people with Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis.

 
本日1本目は、パーキンソン病患者さんに対する運動療法のシステマティックレビューとメタアナリシスです。おそらく理学療法士じゃない方が書かれているのか、健康増進的な視点で、どういった運動介入がいいのかというまとめ方です。理学療法も一つの運動介入ととらえられています。Foxらはパーキンソン病患者さんに対する運動に関して5つの訓練原則を提唱しています;(a)集中的訓練によるシナプス可塑性を最大にする;(b)複雑な活動が大きな構造的適応を引き出す;(c)報酬のある課題はドーパミンレベルを高め学習を促進させる;(d)ドーパミン細胞は活動,非活動に非常に敏感である(use it, or lose it);(e)早期段階で運動介入を行えば進行を遅らせることが可能である。レビュー自体はシンプルなものだったのですが、あとで読み返してみるとん??と思うことが・・・。まず身体機能について。UPDRS等をoutcomeにしているのですが、もっとも効果量が高かったのは、体幹筋力増強+有酸素運動介入、ついでPT+BWSTT、PT+投薬治療、あまりコントロールと変化ないのが在宅理学療法でした。体幹筋力増強+有酸素運動介入はPTの一環としてされています。PTは気功よりわずかに効果量が高いようです・・・。どうやらPTは身体機能を上げるには有効なようです。一方、QOL(SIP、PDQ39、EQ-5D)はどの介入もコントロールと比べるとわずかに良いようですが、在宅理学療法がもっとも高い結果となっていました。メタアナリシスの解釈は気を付けなければなりませんが、ある意味臨床と合致するところはあるなと感じました。様々な問題を抱えるパーキンソン病患者さんにとって運動療法介入単独では限界があると思います。上記の結果からもわかる通り、たしかに身体機能は上がります。それだけで十分なのでしょうか?リハビリテーションチームで解決しなくてはならない問題とは一体何なのでしょうか。その中で理学療法士が責任をもって介入しなくてならない問題とは何なのでしょうか。ふと考えされられるディシジョンツリーでした。ともあれ、PTとして身体機能・動作能力を上げることはもっと突き詰めないといけない!!!
 そこで一度シンプルに振り返ります。立ち上がり。これを改善したい。殿部離床時に後方重心となり伸展相で後方に転倒し着座してしまうというよく遭遇する問題点です。前方に手がかりをおいてみる。荷重フィードバックにて前方重心をフィードバックさせる。それぞれ視覚、聴覚、体性感覚などのフィードバックを繰り返し練習することで改善させる。症例の動画を見ながらdiscussionしました。PDの病態からなぜこうなるのか?これらフィードバックは本当に自動化につながるのか?最近のneuroscienceの知見から新たな介入が浮かびそうな予感もありますが、中々ピカンと発明しない今日この頃です。
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マイクロカレント(微小電流電気刺激)

2本目は和歌山国際厚生学院の北裏先生によるマイクロカレント Micro-current electrical nerve stimulation MCENS,MENSのレビューです。MCENSは1960年代、動物の軟部組織の治癒は四肢の再生を根拠に開発され、損傷電流と呼ばれる損傷部位が電気的に負の状態になる理論を応用したものです。その強度は1Aの1000分の1のさらに下、数十~数百μAです。ですので、知覚することはほとんどありません。直流の場合、陽性電極直下では負の電荷を帯びているマクロファージや白血球などが遊走し、陰性電極下では正の線維芽細胞が遊走するとされております。その他基礎研究でも多くの生理作用がうたわれてますが、未だはっきりしない点が多いのも事実です。(私が無知なだけかもしれませんが・・・)。その臨床応用は、難治性の褥創にたいして、THA,TKAのope後の創傷治癒に、足関節捻挫に対して炎症の軽減と組織の早期回復などに使用されています。中でも難治性の下肢静脈潰瘍に関しては従来のドレッシングや圧迫に加えてMCENSの使用にて治療効果の促進やcost-effectiveな点が報告されています。遅発性筋痛に対してもいくつか効果のあった報告があり、どうやら創傷治癒促進に効果的なようです。一方、鎮痛効果については未だ不明な点が多く、その作用機序もはっきりしません。いずれにしても臨床応用やRCTも少なく、エビデンスも乏しい状況ですが、今後より明確な基礎研究やより科学的で良いデザインの臨床研究の報告が待たれるのと、基礎と臨床を継ぐTranslational Researchが課題といったところでしょうか。実際PT分野というよりエステや整骨院、スポーツ現場でよく使用され、市販されている機器も多数あります。電流が小さいのである意味完璧なプラセボが確立できます。理学療法においてどういった分野で活用できるのかについてはまだまだ研究が必要なようですが、臨床に定着していくためにはやはりある程度の作用メカニズムと明確な臨床効果を兼ね備えたサイエンスベースドな結果が求められると思います。

<参考文献>

J Wound Care. 2011 Oct;20(10):464, 466, 468-72.

Modelling the cost-effectiveness of electric stimulation therapy in non-healing venous leg ulcers.

Taylor RR, Sladkevicius E, Guest JF.

 

Middle East J Anesthesiol. 2009 Oct;20(3):411-5.

Effect of microcurrent skin patch on the epidural fentanyl requirementsfor post operative pain relief of total hip arthroplasty.

Sarhan TM, Doghem MA.

 

Pain Med. 2011 Jun;12(6):953-60. doi: 10.1111/j.1526-4637.2011.01140.x. Epub 2011 May 31.

Microcurrent transcutaneous electric nerve stimulation in painful diabetic neuropathy: a randomized placebo-controlled study.

Gossrau G, Wähner M, Kuschke M, Konrad B, Reichmann H, Wiedemann B, Sabatowski R.

 

J Appl Behav Anal. 1998 Fall;31(3):493-6.

Reductions in self-injury produced by transcutaneous electrical nerve stimulation.

Fisher WW, Bowman LG, Thompson RH, Contrucci SA, Burd L, Alon G.

 

Rehab Manag. 1991 Feb-Mar;4(2):34-5.

Microcurrent therapy; wave of the future?

Wieder DL.

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ヘルペス後神経痛に対するTENSとプレガバリン

Clin J Pain. 2010 Sep;26(7):567-72. doi: 10.1097/AJP.0b013e3181dda1ac.

Pregabalin and transcutaneous electrical nerve stimulation for postherpetic neuralgia treatment.

本日1本目はヘルペス後神経痛PHNに対するプレガバリンとTENSの鎮痛効果に関する論文です。今や5-6人に1人はヘルペス(帯状疱疹)にかかるとされており、皮膚症状から重症となるとさまざまな重篤な合併症を引き起こす疾患です。胸部や腹部、顔面、四肢のあらゆる部位に発症し、急性痛はおよそ2-3週間続きます。徐々に自然治癒で痛みも消えていきますが、炎症が強い場合、神経損傷に伴って痛みが慢性的に続く慢性神経痛に移行します。痛みの程度はさまざまですが、臨床でも耐え難い痛みを抱えておられる症例もよく経験します。その出現率は25%との報告もあり、PHNのQOLの低下は大きな問題となっています。現在のところ治療の中心は薬物療法で、三環系抗うつ薬、オピオイド、トラマドール、ガバペンチンなどがあり、近年はプレガバリンがよく使用されています。プレガバリンは過剰に興奮した神経において、そのカルシウムイオンチャネルのα2δサブユニットに結合して神経伝達物質の放出を抑制する薬理があり、効果発現が早く、長期投与の減衰も少ないことが挙げられています。一方、TENSは伝統的なゲートコントロールや内因性オピオイド、疼痛閾値の増大や感覚可塑性変化などさまざまな効果があるとされています。難治性のPHNに対してこのメカニズムが違う2つを組み合わせてみてはどうかという論文です。デザインはplacebo-RCTで安静時VAS60mm以上のヘルペス発症後3か月経過し、疼痛やアロディニアがある患者さんです。介入は4週間、投薬治療とTENSを実施されました。投薬はプレガバリンを調整し、24hで300mgと600mgの群にサブグループに分けられ、それぞれplaceboとTENSを受けました(計4群、n=30)。その結果、もっとも効果があったのは600mg+TENS群で、その鎮痛効果は40%(最終平均VAS25mm)、次いで300mg+TENS群、そして600mg+placebo、300mg・・・でした。なんとTENSが投薬並の効果がある可能性が示されたわけです。VAS同様、夜間時痛やマクギル、QOLも同様の結果でした。TENSのパラメータについては表記が怪しかったのですが、20msの矩形波、50Hzのバースト?で30分間に強度も変調させたとありました。電極設置部位は神経痛部位周辺です。作用機序の詳細は不明ですが、臨床効果は投薬並??かもしれません。副作用もほとんどないですし、安全ですので、もしPHNでお困りのかたがおられましたら主治医と相談し、検討してみてもよいかもしれません。まだ未発表データなのでここでお話しできませんが、当研究会のテンス徳田が今年度の日本理学療法学術集会でPHNに対するTENSの効果についての症例報告を発表予定ですので、ご興味ある方は是非ご一読を!!
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経皮的脊髄直流電気刺激

Front Psychiatry. 2012;3:63. doi: 10.3389/fpsyt.2012.00063. Epub 2012 Jul 4.

Transcutaneous spinal direct current stimulation.

新年最後はこれまた難解な経皮的脊髄直流刺激です。これは大脳へのtDCSと同じく,脊椎のところに直流刺激をあてるという方法で,これにより健常者において後脛骨神経からのSEPsが減少したり,疼痛ー熱刺激の指標であるレーザー誘発電位が抑制されたりすることが示されています。このメカニズムについてはまだ不明な点が多いのですが(お決まりの文句)簡単にかつ非侵襲的に実施可能という点から,難治性の四肢痛に投薬などの補完治療として期待されています。painだけでなく脊髄サーキットのmodulationも可能とされており,H反射の増大なども報告されているそうです。この生理現象を臨床にどう生かしていくかがポイントでしょうが,まずこのあたりの生理学ももう少し勉強しないといけないと個人的な反省。。。です。。。まだコメントできるほど知識もありませんので,少しずつ理解を深めていきたいと思います。
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pusher behaviorに対する直流前庭刺激

「あらゆる姿勢で麻痺側へ傾斜し、自らの非麻痺側上下肢を使用して、床や座面を押して、正中にしようとする他者の介助に抵抗する」(Davies, 1985)

これまた理学療法の永遠のテーマであるPusher syndrome,Contraversive pushing,pusher behaviour(PB)であります。急性期症状で3か月以内に消失するものが多いとされ,予後はよいとされていますが,臨床では残存する方も多く経験するところです。PBの存在は予後を悪化させるという報告があります。右半球損傷者が重症化しやすく,病巣は右半球では視床後部,島皮質,中心後回,下前頭回,中側頭回,下頭頂小葉などが関連するとされています。そのメカニズムは,身体軸の偏位,自覚的視性垂直位SVVの偏位,空間無視の存在,視覚、前庭覚、体性覚とは異なるsecond graviceptive systemの存在など多要因であります。その中で,前庭機能と関連するという報告があり,われわれはここに注目しています。前庭刺激には頭部の位置変化や姿勢変化などのほかにカロリック刺激やGVSなどがあります。GVSは非侵襲的に容易にかつ意図する方向への前庭系への調整が可能です。GVSによりSVVを操作することも可能とされており,PB患者の治療に応用できる可能性があります。まだまだ問題は山積みですが,数例に実施したところいい印象で患者さんの受け入れも悪くなく,今年の全国学会ではその一部を発表できるかと思います。ここ何十年とPBの治療に大きな変化はありません。GVS単独ではなく,その前庭刺激作用を上手く利用して効果的な理学療法につなげることができればと考えております。

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非特異的腰痛に対するTENS vs 干渉波の効果

Sao Paulo Med J. 2011;129(4):206-16.

Effects of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) and interferential currents (IFC) in patients with nonspecific chronic low back pain: randomized clinical trial.

 
今週は気合の入った3ネタでございます。まずは非特異的腰痛に対するTENS対IFC(干渉波)です。慢性の非特異的腰痛は理学療法にとっても永遠のテーマといれるほど合併されている患者さんが多いと思われます。現在のエビデンスでは,TENS等ポジティブな結果がある程度報告されていますが慢性期には推奨されていません。マニュアルセラピーは相反するエビデンスがありますが,患者教育や運動療法はポジティブな結果が多いようです。そこで,鎮痛目的にTENSを・・・というわけですが,現在臨床でも干渉波電流IFCという機械が多く用いられているかと思います。干渉波は異なる2つの中周波帯域の周波数を掛け合わせることで,その間に干渉電流と呼ばれる電流が生じる。これは従来の低周波TENSと比較して,中周波のため皮膚のインピーダンスを抑えれるため皮膚刺激感覚を減少させることができるというメリットがあるといいます。そんなわけで,ぶっちゃけどっちがいいのかというきわめてクリニカルな研究ですが,結果はTENSとIFCとどちらも効果はほぼ同じで,コントロール(患者教育)群よりは有意に改善したとのことです。しかもNSAIDsの使用量もへったそうです。2週間10セッションの効果を見てますが,VAS平均50から10くらいまで低下してます。これって効果ですぎなのではと思うくらいきれいなデータでしたが,今回のinclusionの非特異的腰痛のくくりがさまざまであり,何が良かったのか,なぜ同等の効果であったのかは不明確な点が数多く残されています。非特異的腰痛自体原因がはっきりしないのでよくわかりませんが,あくまで物理療法は理学療法と一部としてとらえるべきであり,少しでも腰痛を軽減させてエクササイズや患者指導,認知行動治療に移行するべきかもしれません。でないと電気依存症になってしまいますので真のゴールからは外れてしまいます。慢性の非特異的腰痛は近年心理社会的な対策も踏まえて考えていくべきとされていますので,物理療法を含め,腰痛も多角的な視点で介入していく必要があるのだと思います。
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脳卒中後下垂足に対するFES vs AFO

J Rehabil Med. 2012 Jan;44(1):51-7. doi: 10.2340/16501977-0909.

Effects of an implantable two-channel peroneal nerve stimulator versus conventional walking device on spatiotemporal parameters and kinematics of hemiparetic gait.

最近少なくなった埋込みFESとAFOにて歩行の運動学的パラメータが約6か月後どう変化するかのRCTです.結果はFES群のほうがAFO群に比べて麻痺側のstanceやdouble suppportが正常に近づいたとのことですが,有意差ありもその差は数%と微妙な差でした.この論文では実際の理学療法はどの程度実施されていたのか不明でしたが,FESでは背屈を補うことで新たな(というか従来持ってた)機能を再獲得するわけで,再度パフォーマンス学習が必要なのではと思います.より効果的な動作練習を加味すればもっと効果がでるだろうにと単純に思いました.物理療法系の研究全般に言えることですが,今我々に求められているのは物理療法を効果的に加えた運動療法,すなわち「理学療法」の効果ではないかとシンプルに思います.物理療法はさまざまな疾病や障害を抱えた方にベストなコンディションにするための補助的ツールである場合が多いかと思います.そう考えれば適応はかなり広がりますし,もっと臨床効果もあがるでしょうし,物療を気軽に用いていただけるのかもしれませんね.話は大分それましたが,けっこう細かい視点の研究も多くそれはそれで重要なことですが,もっとシンプルな,クリニカルな,実践的なわかりやすい臨床介入研究が増えれば物理療法学会のみならずPT学会も盛り上がるのではと・・・改めて思いました.けどそれって簡単そうで難しいんですよね.その答えは臨床にあるはず!!,今日同僚との何気ない患者さんの問題点に関するdiscussionで一つの疑問と現状の問題点に気づきました.こういったものを大切にして,そして究明していかなくてはならないということでしょうか・・・
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脳卒中後上肢機能障害に対する経頭蓋直流刺激のレビュー

J Hand Ther. 2012 Sep 7. [Epub ahead of print]

A Meta-analysis of the Efficacy of Anodal Transcranial Direct Current Stimulation for Upper Limb Motor Recovery in Stroke Survivors.

 
脳卒中後上肢運動回復に関してM1への陽極直流刺激の効果をメタアナリシスした論文です.2012年5月までの論文をデータベースから集め,両側刺激や対側陰極刺激を除いた8研究が対象となりました.Sham条件と比較して,Jebsen-Taylor hand function testやReaction time, pinch strength, box and block testのエフェクトサイズを見ると,SMDが平均0.49と中等度の効果量でした.PEDroスコアは高い研究ばかりでしたが,サンプルが多くて13/13,介入はほとんどsingle session, follow-upもなし,ADLやQOLへの汎化もあまり検討なし,まあとりあえず研究室ベースの研究が多いとのことです.また,方法論やアウトカムの統一やその種類も課題ありです.臨床的なpragmaticな研究は最近ちょくちょく報告されていますが,rTMSと効果量は大きく変わらないような気がしてます(ほとんどの研究がpre-postで20%前後!?).私自身は中等度から重度の上肢運動障害の方に対して何らかの応用ができないかと強く思っています.そのためにはtDCS単独単発ではダメで,組み合わせる運動療法やその組み合わせ方,治療計画を含むプログラムの進め方,当然病態に合わせた対応なんかが重要だと思っています.どんな治療法もそうですが最終的に永続的な変化にもっていかないとあまり意味はないと思いますので,tDCSで可塑性を誘導した状態で適切な課題,文脈,量によって長期増強に導く・・・.とは言うものの脳はそんな単純ではないわけで,当然興奮もあれば抑制もあり課題によっても行動によっても企図によっても軌道によっても活動パターンは変わるわけで,本当にM1上にオンラインで陽極刺激だけでいいものか,どういった運動療法や他の治療モダリティーとどのようなタイミングで組み合わせるのがベストかを考えていかないといかないのかなと思います.そうでないと組み合わせ方によっては逆効果も考えられますし,現に健常者であればパフォーマンスがかえって低下する報告もされています(畿央大松尾先生論文参照).しかしながら,tDCSはTMSよりかは格段に安全で安価というメリットがあります.一方で,安全性に関してもまだまだ不明な点はあります.そんな中,未だFDAや薬事法でも認可されていない現状を考慮し,上肢とくに手指の機能改善を目指して将来を見据えたきちんとした研究計画のもと研究を進めていく必要性を感じました.「運動と脳」をもう一度読み直します・・・
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運動器疾患における抵抗運動のレビュー

Br J Sports Med. 2012 Aug;46(10):719-26. Epub 2011 Jul 26.

Resistance training in musculoskeletal rehabilitation: a systematic review.

運動器リハにおけるレジスタンストレーニングのレビューです。理学療法において物理療法と運動療法を併用することは非常に重要ですが,運動療法も同時にアップデートしていかないとせっかくの併用治療も意味ありません。というわけで,運動療法について最近の知見をおさらいすることにしました。レジスタンストレーニングは効果が高いことは明々白々ですが,理論的にはわかっていても現実臨床できちんとシステマティックにされているところは少ないのではないでしょうか?なかなか高齢や痛みがあったりで実施しにくいことも多いですが,通常のトレーニングよりも筋力,ADL,QOLへの効果が高いわけですから,やっぱり意識的に臨床に導入していかなくてはなりません。だいたい統一して使用している負荷量は1RMの60-80%です。80%以上は特に膝OA患者さんには痛みを増悪させたり,軟骨破壊を助長する可能性があるそうで,一方効果的であったという話もあります。
いずれにしても,また疾患によって最適なトレーニング方法,量,頻度,強度はまだまだ議論の余地があるとのことです。ちなみにciniiで変形性膝関節症で抵抗運動は0件,筋力強化,増強でも20件以下・・・さらに理学療法関連雑誌は2件,総説がほとんど。うーん,今日本の理学療法で実施されている筋力増強って効果出ているのでしょうか?というか筋力にきちんとアプローチできているんでしょうか?自然回復より有意に結果出ているのでしょうか?むしろ患者さんが自主トレでよくなっているのではないでしょうか?より筋力を高めるにはどうすればよいのでしょうか?今の方法で本当に満足なんでしょうか?私たちがしなくてはならないことは何なのでしょうか?
と自分に言い聞かせ,きちんと臨床に取り組み,臨床的問題点を発見していきたいと思います。
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脳卒中患者の歩行の協調性の回復に関するFESとトレッドミル,床上歩行練習の効果

Neurorehabil Neural Repair. 2011 Sep;25(7):588-96. Epub 2011 Apr 22.

Recovery of coordinated gait: randomized controlled stroke trial of functional electrical stimulation (FES) versus no FES, with weight-supported treadmill and over-ground training.

ClevelandでのFESで有名なDalyさんの研究。デザインはSingle-blindの6か月フォローアップ研究で,埋め込みFES+1.5時間のトレッドミルと床上練習群,no FES群のRCTです。介入は週4回の12週間で結構なintensiveなトレーニングです。メインアウトカムはG.A.I.Tという評価でまだ詳細は読めていませんが,おそらく歩行の動作分析的要素を含んだ順序尺度の評価のようです。その他は,筋力,Fugl-meyer,6MWT,FIMでした。結果は,G.A.I.TがFES群が有意に改善し,6か月後もその改善をキープしていたことでした。その他,群内比較ではFES群,no FES群とも前後で有意に改善していたとのことです。
今週の吟味はまず対象者のbaseline時の6MWTが平均530mとのこと。これは何かの間違いかというくらいの好記録です。さらに4週間で2群とも100-200m改善したと・・・恐ろしい。今回の目的は歩行の協調性が変わるかとのことでしたので,結果は変わったのでバンザイ。しかし,やはり下肢はむずかしいのか,8チャンネルのコンピュータシステムの埋込みFESというこれ以上末梢からの電気では与えようのない完璧に近い機器でけっこう介入したにも関わらず,劇的な変化とまではいかなかったようです。この論文もそうですが,最近私が思うのは,機器の効果をみるためにトレッドミルでも電気でもロボットでも介入を統一された研究が多いですが,やはり患者さんの歩行障害の問題点は様々なわけで,トレッドミルでは背屈筋を促通するのは難しいし,電気でダイナミックな動作や遊脚改善のための腸腰筋の刺激も難しいし,電気刺激もトレッドミルもどういった患者さんのどういった問題点にどう使用すればもっとも効果的かどうかという研究をしていくべきPhaseに来ているのではないかなと思います。そうなれば研究としては難しくなるのですが,実際臨床には一番大事な要素でして,ぜひとも当研究会でも実践していければと強く思いました。
しかしながら,この研究,日本ではまずまねできそうにない重厚なデザインでした・・・
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脳卒中後歩行障害に対する中殿筋への電気刺激-予備研究-

つづいて当研究会メンバーである和歌山国際厚生学院 福井直樹先生の研究報告。

福井先生は現在,脳卒中後の歩行障害に対する中殿筋への電気刺激の効果を検証しようとされておられます。とある疫学データでは脳卒中患者の約35%が下肢運動麻痺から実用的な機能まで回復することができず,20~25%の患者が物理的な介助なしでは歩行することができないとされており,脳卒中後歩行障害の改善は我々理学療法士にとっても大きな命題の一つです。脳卒中患者さんの歩行障害の原因はさまざまですが,より生活に密着した問題となりうるのが歩行速度の低下や安全性の低下です。中でも股関節外転筋の活動の低下は麻痺側下肢の立脚期の安定性に大きな影響を与え,非対称性の主な原因となったり,歩行速度との関連が指摘されています。一般的に,電気刺激は下垂足drop footを改善する目的で前頚骨筋(あるいは総腓骨神経)に実施される場合が多く,本邦のガイドラインやEBRSR(http://www.kio.ac.jp/~a.matsuo/:日本語版)でも推奨されていますが,中殿筋に実施している研究はほとんどないのが現状です。しかし,近年までのFES研究を踏まえると中殿筋の筋活動も改善できる可能性が大いに考えられます。

まだ予備的研究の段階ですが,順次良い結果を報告できればと考えております。

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経頭蓋直流刺激tDCSは麻痺肢の運動スキル習得に影響を与えるか?

Stroke. 2012 Aug;43(8):2185-91. Epub 2012 May 22.

Modulation of training by single-session transcranial direct current stimulation to the intact motor cortex enhances motor skill acquisition of the paretic hand.

 
本日の英文抄読1本目。Strokeのonline firstの分ですが,脳卒中患者さんの麻痺側上肢の運動系列動作学習が非損傷半球M1への陰極経頭蓋直流刺激tDCSによって修飾されるかどうかを検討した研究です。対象者はかなり軽度の運動麻痺でした。(系列運動はキーボードをとある順番で打つという課題なので)ダブルブラインドのRCTで,1セッションのtDCS(20min)中?に5 blockの練習,90分後に再評価+4block, 24時間後再評価+4blockというようなdesignでした。結果は,系列運動の正当数がSham刺激と比較してtDCS群が90分後22%の改善,24時間後も平均19%の改善を維持していました。経頭蓋磁気刺激TMSを用いた評価では短時皮質内抑制の変化と課題の改善率と正の相関が認めました。つまり,tDCSは早期にオンライン(課題実施中の)学習の改善を促進させた,かつ24時間後も続いていたとされ,スキル獲得に寄与するのではとのことです。tDCSの介入効果は即時的に筋力が改善したり,機能パフォーマンスが改善したりと近年さまざまな研究が報告されています。この研究は,脳卒中患者さんの運動学習をも促進させる可能性を示したおそらく初めて?の報告になります。いわゆる半球間抑制メカニズムにより麻痺肢の学習が阻害されている場合があるのであればこの方法はそれを変調させるツールになるかもしれません。あくまで慢性期の患者さんなので,これが急性期,回復期の方に適応できるかは疑問がのこりますが,新規の系列動作の学習効率がすすむ可能性が示されたのは面白い結果だと思いました。たとえば,入院リハにおいて車イスからの移乗動作習得における学習などに応用できるかもしれません。まあ正確には単純な系列運動とは言えないので研究結果をそっくりそのまま応用するのは無理がありますが・・・。tDCSにおいても日本では薬事法で認可されておらずまだ臨床で使用することは困難ですが,近年ものすごいスピードで研究数が増えてきております。いずれ臨床応用される日も近いかもしれません。個人的には,シンプルに理学療法効果を高めるような使い方ができないかと思っています。事前にtDCSを加味することで運動スキル学習の改善が少しでも早くなれば,最終的に標準的なリハよりも早く在宅や社会に復帰できるかもしれません。直流刺激という点で皮膚のかぶれややけどなどのリスクが懸念されますが,TMSよりも圧倒的にリスクは低く,コストも安いです。頭痛などの副作用も報告されていますが,いまのところ重篤なものは報告されていません。欧州ではすでに家庭用のtDCS装置も販売されていると聞きます。日本でもはやく効果が明らかにされて臨床応用されればと思いますが,そのためには地道な研究が必要ですね。
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パーキンソン病患者に対する間欠性シータバースト刺激の効果

Neurology. 2011 Feb 15;76(7):601-9.

Intermittent theta-burst transcranial magnetic stimulation for treatment of Parkinson disease.

本日論文3本目。今月はちょっとやりすぎましたか?みなさんヘトヘトでした。しかも濃い内容ばかり。最後は究極でしたが(笑)。パーキンソン病患者さんに対するシータバースト刺激です。これは,rTMSの派生みたいなもので,脳波から観察されるシータ波と呼ばれる5~10Hzのリズムで短い連続刺激を繰り返すと,長期増強LTPが効率よく誘導できるそうです。これはもともと動物実験で海馬から生じる波形からスタートしているようですが、近年脳卒中患者さんにも応用されたりしています。rTMSよりも安全でより理にかなった方法のようで、M1興奮性の増大なんかを誘導できるそうですが、実際体験したことないのでわかりません。 運動閾値TMSは体験しましたが,あまり気持ちの良いものではありません(笑)
この研究では、メインアウトカムを10m歩行時間としていますが、なぜかM1手指領域と背外側前頭前野DLPFCに実施しています。結果は、10mやUPDRSには有意な変化がなく、抑うつが改善し、手指の寡動が改善傾向にあったそうです。DLPFCへのrTMSは欝に対する方法として多く実施されていますが、それら先行研究通り気分が改善したようです。しかし、歩行はshamと比較して有意差なし。当然歩行であればM1下肢体幹領域に刺激するほうが良いのでしょうが、現実問題として困難なのか実施しておられませんでした。脳卒中患者の下肢運動障害に対するrTMSの報告も現状ほとんどないと思います。リスクのほうが大きいからでしょうか。半球間抑制メカニズムとはまた違う理論根拠になるからでしょうか。
パーキンソン病患者さんの場合では、その病態から考えてtDCSをFESのように使用したほうが気軽で効率的で臨床的に良いように思います。ヘルメットをかぶりながら(少し現実的ではないかもしれませんが)刺激するという感じです。皮質に抑制がかかっているような状況の中で、TMSのような刺激でいくらM1などの興奮性を高めても内発的運動にブロックがかかるような状況であれば実際の動作としては発現しにくいと考えられます。その点、tDCSをFESのように使えればoffのときにスイッチを入れるなどの工夫で運動発現を少しでも改善できるのではないでしょうか??ただし、直流刺激では長時間使用するとやけどやかぶれのリスクが上がるので、パルス波やon/offを設けるなどの工夫が必要かもしれません。そのうち研究が出そうな気がします。
と今月の物理医学系リハ研究会はここまで。
皆様お疲れ様でした。コメントいただけると幸いです。
当日話せなかったことなどディスカッションに役立ててください。
では、来月もよろしくお願いいたします。
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運動イメージ+筋電誘発電気刺激は皮質変化をさせるか?

Stroke. 2012 Sep;43(9):2506-9. Epub 2012 Jul 12.

Cortical changes after mental imagery training combined with electromyography-triggered electrical stimulation in patients with chronic stroke.

本日2本目論文。慢性期脳卒中患者さん14名に対して心的イメージ練習と筋電誘発型電気刺激(MIT-EMG)を組み合わせた練習を1回20分の治療を1日2回,週5回4週間実施してます。結果,MIT-EMG群においてFugl-Meyer上肢項目が有意に改善(平均29点→介入後7点変化)したと報告してます。MALやBarthel Indexは有意差なしでした。
当研究会の小嶌はミラーセラピー+筋電図誘発型電気刺激を実施しており,概ねポジティブな結果を報告しております。http://ci.nii.ac.jp/naid/40019327875 http://ci.nii.ac.jp/naid/10029929128 http://ci.nii.ac.jp/naid/40017271483
実施している内容のコンセプトはかなり似通っているのですが,細かい方法についてはつっこみどころ満載の論文です。コントロール群であるETMS実施群も全く変化していない所は他の研究と異なる点ですし,このデザインでは,ETMS単独よりもMITを付加した方がいいのか,MIT単独の効果でよかったのかが不明です。follow-upもなし。されど,PETで皮質変化を見ているという点でノイエスがあるのでしょう。しかし,contralesional motor–sensory cortexの代謝が増大したという点はやや疑問が残ります。どちらかというとこの治療のコンセプトからいくと,病巣側の賦活を狙ってると思うのですが,対側が賦活するようになったというのは,非病変半球からの出力が増大したということでしょうか?このあたりの考察はまったくされておりませんでしたが,半球間抑制メカニズムなどから考察するとん??と首をかしげてしまいます。しかし,STROKE・・・acceptまで約1か月半・・・何で(笑)。
当研究会からいずれSTROKEに論文が載る日を目指して・・・みなさん頑張りましょう!!
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fMRIによる中枢性疼痛機構に対するTENSの効果

Clin J Pain. 2012 Sep;28(7):581-8.

Functional Magnetic Resonance Imaging of the Effects of Low-frequency Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation on Central Pain Modulation: A Double-blind, Placebo-controlled Trial.

本日の勉強会1本目。TENSの効果をfMRIで見てみようという研究です。デザインはダブルブラインドのsham-controlled studyということでかなり気合の入ったデザインです。対象はインピンジメント症候群の患者さん20名で30分の低周波運動レベルTENSを有痛部位に実施しています。その結果,VASの低下を認め,fMRIでは対側の1次感覚皮質,両側尾側前帯状回,同側補足運動野の活動が減少したとのこと。このfMRIは他者の痛み表情を観察し得られたものをその活動として評価しています。実際のインピンジメント時の痛みをfMRIで撮影していないため,(現実不可能ですが・・・)あくまで間接的評価ですが,shamと比較して変化があるというのは面白い結果だと思います。しかし,気になるのが対象者のインピンジメント症候群罹病期間。1-24か月と差があります。それでは,脳内の疼痛の表象も急性期,慢性期で変わってくるような気がするのですが・・・。そしてこの前帯状回は注意,エラー検出,動機づけ,情動などさまざまな機能を有するところで,そこの活動が減少するというのは新たな発見で面白いと思いました。
TENSの疼痛抑制メカニズムについては,これまでゲートコントロールや内因性オピオイド理論などどちらかというと脊髄レベルまでの話が多かったですが,皮質レベルでの疼痛抑制理論はあまり聞いたことがありません。今後より発展する分野だと思います。
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ガン性疼痛に対するTENS

Cochrane Database Syst Rev. 2012 Mar 14;3:CD006276.

Transcutaneous electric nerve stimulation (TENS) for cancer pain in adults.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD006276.pub3/abstract;jsessionid=D39AA725F6C2E22AF144FDFA8A6E1B0F.d03t02

 

本日の英文抄読はこちら。ガン性疼痛に関するTENSについて,RCTの報告はかなり少なくて,現状3本程度。

現在がんのリハビリテーションの分野はかなり注目されており,理学療法士が身体機能やADLの向上に寄与できる可能性が示唆されてます。

理学療法士にとって大きな武器である電気刺激の中に,TENSという除痛のツールがありますが,

がんリハの分野ではあまり実施されていません。そもそもガン性疼痛の疼痛管理は投薬が主体ですが,投薬による副作用の問題が付きまといます。そこで,TENSの出番です!!TENSによる鎮痛により投薬量を減らす可能性があります。

しかしながら,まだどういった疼痛に,時期に,部位に,どんなパラメータで,どれくらい,どの程度継続すれば,疼痛が緩和されるのは,まだまだ検討しなくてはならない点が山積みです。

少しでも疼痛が緩和できて,かつ自宅で利用できて,セラピストが電気の調整を行いながらできるだけ投薬量をへらし,運動を確保できればADLやQOLの向上に寄与できるのではと考えております。

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透析中の物理療法の可能性

透析中よく問題になるのが透析中の低血圧です.透析前,中,後の低血圧は生命予後に大きく影響を及ぼすとされております(Shoji,2004).透析中低血圧を予防するために様々な物理療法が用いられています.代表的なものに空気圧マッサージ(ハドマー,メドマー等)があります.これらは下肢圧迫により静脈還流を促すことで血圧を増大させるという試み(スターリングの法則)です.しかしながら,先行研究では相反するエビデンスが報告されており,未だその効果は不明です.

 

他のモダリティーはどういったものがあるのでしょうか?理論的に有効だと考えられるのはもちろん電気刺激です.下腿三頭筋への電気刺激により筋ポンプ作用を利用して静脈還流を促すという方法です.この方法はDVTの予防など古くから実施されておりましたが(高取ら,2003,http://ci.nii.ac.jp/naid/110003993177),近年透析中における応用が試みられています.

 

下肢に対する電気刺激にて循環動態がどう変わるか,この視点では先ほどのDVT含め,心疾患,末梢動脈疾患など様々な疾患に応用されています.

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23312939

J Vasc Surg. 2013 Mar;57(3):714-9.
Calf muscle stimulation with the Veinoplus device results in a significant increase in lower limb inflow without generating limb ischemia or pain in patients with peripheral artery disease.
Abraham P, Mateus V, Bieuzen F, Ouedraogo N, Cisse F, Leftheriotis G.

この研究は,腓腹筋への電気刺激が,末梢血管疾患PAD患者の動脈血流と組織酸素含有量への効果を検証しています.結果,筋虚血または疼痛を誘発せずに動脈血流を有意に増大させたと報告されています.しかし,PAD患者の歩行量改善の補助的な治療手段として使用できるかはまだ明らかではありません.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19169019

Blood Purif. 2009;27(1):58-63.
Enhancing hemodialysis efficacy through neuromuscular stimulation.
Madhavan G, Nemcek MA, Martinez DG, McLeod KJ.

この報告では下腿三頭筋に周波数45Hzにて電気刺激を8週間実施しており,透析中に除水率の改善と血圧降下の緩徐に寄与した可能性を示しています.

 

当研究会の北裏真己,吉田陽亮は透析患者への電気刺激療法の予備的研究を実施しております.予備的研究では健常者に対する下肢への10分間の電気刺激にて有意な血圧の増大,一回拍出量の増大を確認しました.今後,透析中の低血圧予防と身体機能改善に対するリハビリテーションの実現に向けて,症例への実施例を含め逐次ご報告できればと考えております.

 

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全人工置換術後の神経筋電気刺激NMES

Eur J Phys Rehabil Med. 2013 Dec;49(6):909-20. Epub 2013 Nov 28.

Neuromuscular electrical stimulation after total joint arthroplasty: a critical review of recent controlled studies.

 
NMESはTKA後の大腿四頭筋の筋力増強手段として使用されています。その目的は、大腿四頭筋の随意的な活性化が不十分な患者に十分な訓練量を提供すること、筋力増強を促通すると考えられている神経生理学的メカニズムを関与させること、大腿四頭筋の神経筋システムに一般的な物理的ストレスを与えることです。その主な目的は,TKA直後に特徴的に起こる回復しにくい急激な筋力低下を軽減させることです。
 近年、NMESは臨床研究、RCT、Cochrane reviewで注目されており、TKA患者の大腿四頭筋の筋力と身体能力の改善に関して、NMESの総合的な効果には相反するエビデンスが存在すると報告されています。しかし、介入パラメーター(使用方法、強度、時間、術後の時期)が研究間で異なっています。このレビューの目的は、TKA後の大腿四頭筋の回復の時間経過について、NMESの生理学的メカニズムを背景において、最近の臨床研究を批判的に評価することでした。
TKA後の多くの患者は、疼痛と自己報告による機能は劇的に改善するが、客観的な身体能力の障害が残存する。健常高齢者と比較して、TKA後6ヶ月でTUGは63%遅くなり、階段昇降速度は104%遅くなる。
 TKAは手術直後に急激な大腿四頭筋の筋力低下を引き起こすことが特徴的です。術後1ヶ月で大腿四頭筋の筋力低下は50~60%低下し、多くの患者で術前のレベルまで回復しないことがエビデンスで示されています。
 比較的健康な高齢者において、術後6~13年経過しても大腿四頭筋の筋力低下は残存していると示されています。また,大腿四頭筋の機能障害は、歩行速度の低下、バランス障害、起立動作能力の低下と関連し、転倒リスクを増やすとされてます。つまり、大腿四頭筋の筋力低下は、身体の健康や自立した生活を送る上で重要なアウトカムに直接的に影響を与える可能性が高いので
す。
近年の研究により,TKA後の筋力低下は主に①筋性,②神経性の要因で生じており,特にTKA後は神経性要因によるものが強く,その後廃用性筋萎縮に移行すると考えられております.そのため,大腿四頭筋筋力低下に対する治療戦略には,神経系の回復に着目すべきであり,NMESが活用できるというわけです.
 
近年4つのRCT研究があり,それぞれ考察されております.

Comparing conventional physical therapy rehabilitation with neuromuscular electrical stimulation after TKA.

Levine M, McElroy K, Stakich V, Cicco J.

Orthopedics. 2013 Mar;36(3):e319-24.

 

Early neuromuscular electrical stimulation to improve quadriceps muscle strength after total knee arthroplasty: a randomized controlled trial.

Stevens-Lapsley JE, Balter JE, Wolfe P, Eckhoff DG, Kohrt WM.

Phys Ther. 2012 Feb;92(2):210-26.

 

Improved function from progressive strengthening interventions after total knee arthroplasty: a randomized clinical trial with an imbedded prospective cohort.

Petterson SC, Mizner RL, Stevens JE, Raisis L, Bodenstab A, Newcomb W, Snyder-Mackler L.

Arthritis Rheum. 2009 Feb 15;61(2):174-83.

 

Does electric stimulation of the vastus medialis muscle influence rehabilitation after total knee replacement?

Avramidis K, Karachalios T, Popotonasios K, Sacorafas D, Papathanasiades AA, Malizos KN.

Orthopedics. 2011 Mar 11;34(3):175.

 

以上の4つの研究から要点をまとめると

  • NMESはTKA後早期に実施すべきである
  • 治療効果を高めるには高頻度のNMESが必要かもしれない
  • 筋力増強には高強度のNMESが必要かもしれない
  • NMESは監視下の練習に付加するものとして最も効果的である

 

NMESのメリットは

1)患者は、適切な強度で随意的な筋力増強訓練ができない術直後に随意収縮の障害を呈している。

2)NMESは自己管理でき、毎日効果的に実施できる。

3)NMESは適切な用量にて、筋力、身体機能、健康面で劇的かつ持続的な改善をもたらす

こととまとめられています.

 

我々の研究会でも,TKA後,ACL後の筋力増強にNMESを付加する研究を実施しております.大和橿原病院の吉田先生らによる研究において,TKA後感覚刺激NMESにおいても刺激なし群と比較して術後有意な筋力の改善を認めております(日本物理療法学会会誌,in press)

この感覚刺激は上記研究のNMESよりも痛みが少ない(ほぼない)ため,患者さんの受け入れがよく,コンプライアンスを高める方法としてはアリなのではと考えております.

研究成果は順次HPにアップしてまいります.

 

 

 

 
 
 
 
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脳卒中後肩の痛みに関する文献レビュー

NeuroRehabilitation. 2012;30(2):153-65.

Towards a mechanism-based view on post-stroke shoulder pain: theoretical considerations and clinical implications.

Roosink M, Renzenbrink GJ, Geurts AC, Ijzerman MJ.

 

激務で勉強会内容のご報告がおろそかになってしまい,申し訳ございません.激務はただの言い訳です.今年は復習もかねてしっかりアップしたいと思います.

 

というわけで,新年一発目.健常者に対するGVSと肩の痛みに関するレビューです.GVSはマニアックすぎるのでもう少しまとまってから報告いたします.

 

オランダの研究者Roosink氏によるレビューとここ五年の脳卒中後肩の痛み(post-stroke shoulder pain: PSSP)についてレビューしました.以下に要点を書きます.

 

 

•現在のところ,Post-stroke shoulder pain(PSSP)のメカニズムの理解について未だ明確ではない

•理論的に,PSSPは侵害受容性,または中枢性神経因性疼痛かその両方であるとされる

•加えて,PSSPの始まりの責任機構はそれが持続する機構と異なるかもしれない

•この関係は脳卒中後疼痛の診断と治療の関係に問題を投げかける

•しかし,PSSPにおいて報告されたそれぞれの症例は単に脳損傷や上肢の軟部組織の損傷がPSSPの患者の主要な要因を占めていると考えられている

•軟部組織損傷は患者自身による管理の不足に組み合わさって脳卒中後の神経筋制御の低下によって生じる可能性があり,結果として体性感覚や認知機能の障害も認める

•上肢の運動障害は多くの日常生活を遂行するために運動の自由度が多く,そのため損傷する傾向にある

•そして,外傷はたびたび,反復する微細な,あるいは持続的な微細損傷によって軟部組織損傷が生じる

•加えて,不活動の長期化や代償の使用,痛みによる非正常な運動パターン,運動制御の低下は結果として痛みを侵害疼痛の進行に寄与する

•長期的な侵害受容は脊髄と上脊髄ニューロンレベルの両方で構造的再構成を生成する.

•感作が永続的になるように無害の刺激でさえ痛みになる

•加えて持続的な侵害受容(刺激?)はDNICの永続的活性化につながる可能性があり,結果として内因性抑制が無効になる

•脳卒中後中枢性疼痛は脳卒中による感覚入力の欠如が直接的な抑制の欠如,もしくは増大した上脊髄侵害受容の促通によるものである可能性がある

•一方で,脳損傷は脊髄侵害受容の促通もしくは脱抑制を引き起こす.また,情動や認知や自律神経の変化も生じさせる

•認知(注意)や情動(不安)は二次的な慢性疼痛に移行させる可能性があり,結果として患者の社会環境(対人関係)の変化を引き起こし,疼痛行動の増加やPSSPの持続に寄与する

 

この病態を示すわかりやすいモデル図がこの文献には提示されています.

リハ介入は不使用,無視,感覚障害,運動麻痺,情動,自律神経系,麻痺側の管理,早期の鎮痛などどのあたりに介入すべきかをわかりやすく解説してくれています.各病期によっても病因が異なってくることも注目すべきことだと思います.

 

その他の文献もレビューしましたのでご参考までに.

 

Stroke. 2007 Feb;38(2):343-8.  

Shoulder pain after stroke: a prospective population-based study.

Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, Lindgren A.

 

 

Eur Neurol. 2011;66(3):175-81.

Enhanced-MRI and ultrasound evaluation of painful shoulder in patients after stroke: a pilot study.

Pompa A, Clemenzi A, Troisi E, Di Mario M, Tonini A, Pace L, Casillo P, Cuccaro A, Grasso MG.

 

 

J Rehabil Med. 2012 Jun 7;44(7):553-7. 

Sonography and physical findings in stroke patients with hemiplegic shoulders: a longitudinal study. 

Pong YP, Wang LY, Huang YC, Leong CP, Liaw MY, Chen HY.

 

 

J Physiother. 2013 Dec;59(4):245-54.

Combined arm stretch positioning and neuromuscular electrical stimulation during rehabilitation does not improve range of motion, shoulder pain or function in patients after stroke: a randomised trial.

de Jong LD, Dijkstra PU, Gerritsen J, Geurts AC, Postema K.

 

 

ClinRehabil. 2012 Sep;26(9):807-16.

Functional orthosis in shoulder joint subluxation after ischaemic brain stroke to avoid post-hemiplegic shoulder-hand syndrome: a randomized clinical trial.

Hartwig M, Gelbrich G, Griewing B.

 

 

Stroke. 2013 Nov;44(11):3136-41. 

Suprascapular nerve block for shoulder pain in the first year after stroke: a randomized controlled trial.

Adey-Wakeling Z, Crotty M, Shanahan EM.

 

 

 

当院でも5年間のカルテから肩の痛みの有病率を算出しましたが,約38%と先行研究とよく似た結果になりました.かといって明確な介入ができていないのが現状です.肩の痛みはその後の機能予後やQOLに影響を与え,メンタル面にも大きな影響を及ぼします.脳卒中患者さんの主要な問題点の一つですが,これといってまだ決定打がありません.何とかこの問題を解決すべく研究を続けていきたいと思います.

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脳卒中後運動障害に対するFES

現在、FES(機能的電気刺激)は脳卒中患者の運動障害の改善に用いられています。元々はFESはあくまで機能再建として用いられていました。いわゆる補装具と同類と考えらえ、神経補綴

neuroprosthesisとも表現されます。しかしながら、脳の可塑性変化やFESの治療的効果が確認されるとともに、徐々に治療的な使用としてのFESが多く用いられるようになってきました。

すでにFESがFESでなくなってきており(笑)、NMESやTESなど用語の統一を図るべきかもしれません。

話はそれましたが、テクノロジーの進化に伴いFESも劇的に変化してきてます。個人的には、機器の発達と病態のメカニズムの解明、効果の生理学的メカニズム、臨床現場の現実的問題それらがうまくかみ合っていない印象を受けます。我々は理学療法士という立場から実際の臨床の問題点や患者さんの声を聞いて、それを解決する研究を実施しなくてはなりません。その視点を大切にし、今既存のFESを用いて様々な可能性を調査しています。まだまだ問題点は山積みですが、いずれ必ずや臨床現場で活きるFESの報告をしていきたいと思います。

 

今回小嶌先生がレビューした論文です。ご参考までに。

Neurorehabil Neural Repair. 2012 Mar-Apr;26(3):239-46.

Contralaterally controlled functional electrical stimulation for upper extremity hemiplegia: an early-phase randomized clinical trial in subacute stroke patients.

Knutson JS, Harley MY, Hisel TZ, Hogan SD, Maloney MM, Chae J.

 

Neurorehabil Neural Repair. 2009 May;23(4):357-65.

Bilateral upper limb training with functional electric stimulation in patients with chronic stroke.

Chan MK, Tong RK, Chung KY.

 

Arch Phys Med Rehabil. 2007 Jul;88(7):833-9.

Upper-extremity functional electric stimulation-assisted exercises on a workstation in the subacute phase of stroke recovery.

Kowalczewski J, Gritsenko V, Ashworth N, Ellaway P, Prochazka A.

 

Neurorehabil Neural Repair. 2007 May-Jun;21(3):207-15.

Functional electrical stimulation enhancement of upper extremity functional recovery during stroke rehabilitation: a pilot study.

Alon G, Levitt AF, McCarthy PA.

 

Stroke. 2010 Apr;41(4):821-4.

Dose-response relation between neuromuscular electrical stimulation and upper-extremity function in patients with stroke.

Hsu SS, Hu MH, Wang YH, Yip PK, Chiu JW, Hsieh CL.

 

Neurorehabil Neural Repair. 2011 Nov-Dec;25(9):830-7.

Effectiveness of hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation therapy in patients with subacute stroke: a randomized controlled pilot trial.

Shindo K, Fujiwara T, Hara J, Oba H, Hotta F, Tsuji T, Hase K, Liu M.

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大腿骨骨折後Mobilityトレーニング

Mobility training after hip fracture: a randomised controlled trial.

Moseley AM, Sherrington C, Lord SR, Barraclough E, St George RJ, Cameron ID.

Age Ageing. 2009 Jan;38(1):74-80.

 

今月の英文抄読は大規模なRCTです。

股関節骨折後の異なる二つのエクササイズプログラムの効果を評価者ブラインドRCTにて比較しています。対象は股関節骨折のため外科的固定実施後、入院リハビリテーションに移行した160名です。
他のリハビリテーション戦略に付加して、介入群は立位での多量(higher dose)のエクササイズを受け、比較対照群は座位もしくは背臥位での少量(lower dose)のエクササイズを受けています。
一次アウトカムメジャーは骨折側の膝伸展筋力と歩行速度であり、介入後およびフォローアップに群間差を認めませんでした。しかし、サブグループ解析では認知症を合併する患者において多量群がより大きな改善を示しました。

本邦でも大腿骨骨折後のリハビリテーションは最も重要なテーマの一つです。しかしながら、有効とされるリハビリテーション介入のエビデンスは依然乏しいのが現状です。医療費抑制の渦中、急性期病院における入院期間はどんどん減少し、術後のリハビリテーションはその根本から変革しなければならない時期にきていると思います。そんな中、物理療法が活躍できる要素は多分にあると考えております。

我々は急性期から回復期にかけて、いかに廃用症候群を予防するか、筋力および痛みを改善させるか、ADLを早期に改善し、QOLの向上を図るか、その一つの補助ツールとして電気刺激の応用を試みております。結果は順次報告していきたいと思います。

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ガンのリハビリテーションにおける電気刺激の有用性

J Pain Symptom Manage. 2009 Dec;38(6):950-6. doi: 10.1016/j.jpainsymman.2009.05.011.

Randomized controlled pilot study of neuromuscular electrical stimulation of the quadriceps in patients with non-small cell lung cancer.

 
これも先月の内容です。肺がん患者さんへのNMESの予備的研究。非小細胞肺がん患者(NSCLC)は筋委縮と筋力低下を示し、この変化はQOLを低下させる可能性があります。がん治療は疲労から活動量を低下させ、さらなる筋力低下を生じさせます。これに対し、効果的な治療はなく、新しいアプローチが必要とされています。
それらを改善する一つの方法として運動療法がありますが、運動プログラムを完遂できるがん患者は約半分であるとされています。さらに息切れや軽い運動で疲労を訴える患者は歩行や自転車トレーニングなどは非常に厳しいかもしれません。
これらの問題を回避する一つの方法として大腿四頭筋への電気刺激(NMES)があります。NMESはホームエクササイズで可能なためライフスタイルの変化を必要とせず、受動的な介入であるため、従来の運動より少ないモチベーションで実施可能です。
本研究では群間差は出ていませんでしたが、NMES群の方がより筋力や身体活動が改善する傾向にあり、一番大きなことは、重篤な有害事象は報告されなかったことかと思います。初回の治療後、3人がわずかな筋肉の不快感を訴えたそうですが、治療終了後は“階段昇降が楽になった”“立ち上がりが容易になった”“歩行時の下肢がしっかりしている”といった肯定的な感想があり、すべての患者が再び電気を使用したいと述べていたそうです。
理学療法は様々な疾病により障害が生じた患者さんにADL,QOL向上のため様々なアプローチを駆使します。この電気刺激は我々理学療法士が専門とする大切なツールの一つだと思います。電気刺激や神経生理学などの正しい知識を身に着け、より多くの患者さんを少しでもよりよい結果に導くため物理療法の可能性を探る努力を続けたいと思っています。
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ACL再建術後のリハに電気刺激を付加しよう!!

Am J Sports Med. 2011 Jun;39(6):1238-47. doi: 10.1177/0363546510396180. Epub 2011 Feb 22.

The effectiveness of supplementing a standard rehabilitation program with superimposed neuromuscular electrical stimulation after anterior cruciate ligament reconstruction: a prospective, randomized, single-blind study.

 
これは先月の資料です。激務でアップするのが遅れました・・・すみません。
ACL再建術後リハビリテーションにおいて,神経筋電気刺激(NMES)は,筋力低下を抑え,従来の治療の補助的手段として役立つかどうかを調べた報告です。対象は標準リハビリテーションプログラムを完了した患者96名で、伝統的な神経筋電気刺激(Polystim群)と新しい衣類に統合した神経筋電気刺激群(Kneehab群)と術後標準リハビリテーションプログラムのみの群(Control群)とで効果を比較しております.2つのNMES群は,1回20分,3回/日,5日/週,12週間のNMESを実施し,さらに等尺性随意収縮を重畳しました.術側・非術側共に,等速性膝伸展筋力と機能パフォーマンスを術前,術後6週目,12週目,6ヵ月目に評価しました.結果、Kneehab群では,Polystim群とControl群より全ての期間で等速性膝伸展筋力の有意な改善を示し、Kneehab群の片足ジャンプは,術後6週~6ヵ月で50%改善されたのに対し,Polystim群26.3%とControl群26.2%でした。Tegner scoreとInternational Knee Documentation Committee 2000 knee examination scoreには有意差はありませんでしたが,Kneehab群は,Lysholm scoreが術前より有意な改善を示しました.
非常に興味深い報告で、TKA術後の電気刺激も以前この研究会でも触れましたが、現在大和橿原病院の吉田先生中心にACL研究もスタートしております。電気刺激はうまく利用することで、従来の筋力増強に付加的価値を加えることが可能です。電気刺激により中枢性筋力増強が期待できるエビデンスも多数存在し、運動器疾患であってもこの中枢性筋力増強の占める割合が多い場合が多々あります。今後良い結果がでれば順次報告させて頂きたいと思います。
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人工透析実施慢性腎不全患者に対する運動療法 物理療法の可能性

J Am Soc Nephrol. 2007 May;18(5):1594-601. Epub 2007 Apr 4.

Progressive exercise for anabolism in kidney disease (PEAK): a randomized, controlled trial of resistance training during hemodialysis.

Am J Nephrol. 2005 Jul-Aug;25(4):352-64. Epub 2005 Jul 22.

Exercise training in patients receiving maintenance hemodialysis: a systematic review of clinical trials.

本日は和歌山国際厚生学院の北裏先生による人工透析治療を受けておられる慢性腎不全患者の運動療法についてレビューしていただきました。腎不全患者さんの骨格筋萎縮は予後予測においても重要な指標であり、アシドーシスやprotein-energy malnutrition(PEM:骨格筋などの体構成蛋白の減少と血清蛋白成分の減少を伴う栄養障害),内科的合併症,副腎皮質ステロイドの使用,加齢,酸化ストレス,透析治療,活動性低下など,すべての要因が筋線維の減少や萎縮,筋肉内脂質の産生に著しく影響しているとされています。当然ながら、この筋萎縮は活動や参加レベルに影響するのはもちろんのこと、生命予後にさえ強くかかわるとされています。長年、重度腎不全や透析患者において運動療法は禁忌とされていましたが、筋力増強や持久力練習といった運動療法の有効性は数多く示されています。しかしながら、臨床ではリスクが高く、またコンプライアンス、アドヒアランスの問題もあり、実際臨床に浸透していないのが実情です。

理学療法においても、必要度は高いにもかかわらず腎不全という疾患別リハは算定できません。そのため、各施設で工夫されながらリハビリテーションが提供されています。

この現状を打開すべく、我々は有効な理学療法を提示していく必要があります。そこで、着目しているのが「電気刺激」です。海外では数本透析中の電気刺激療法が実施されています。筋力増強効果や透析効率の向上など様々なポジティブな結果が報告されています。この電気刺激の最大のメリットは安全かつアドヒアランスの問題も解決できることだと思います。

現在予備的に研究がスタートしておりますので、順次報告して参りたいと存じます。

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感覚障害に対するtDCS

Clin Neurophysiol. 2008 Apr;119(4):805-11.

Improvement of spatial tactile acuity by transcranial direct current stimulation.

Brain Stimul. 2012 Oct 27.

Transcranial direct current stimulation ameliorates tactile sensory deficit in multiple sclerosis.

新年度一発目は感覚障害に対するtDCSです.脳卒中患者において感覚障害は約1/3にみられ,運動障害単独よりも感覚障害を合併すると機能的自立度が低下することが知られています.近年のシステマティックレビューにおいても脳卒中後感覚障害に対する介入において感覚というImpairmentを改善するにはコレ!という介入報告は少ないのが現状です.近年研究が進んでいる経頭蓋直流刺激tDCSですが,陽極をS1に貼付することで健常者においても感覚(grating orientation taskという課題において)が改善したという報告がなされました.またこれを多発性硬化症患者に応用したのが下2つ目の論文です.この論文でも1日20分2mA,5日間の介入が有意に感覚を改善させたとありました.運動野のみならず感覚野の可塑性変化も生じることは明らかにされており,ラットの髭の切断やヒトにおける四肢切断患者において,その脳地図にリモデリングが生じることが報告されています.我々理学療法士は治療中常に感覚フィードバックを入力しています.なぜなら運動学習には必須だからです.感覚入力方法を上手くデザインすることが学習を促進するうえではかなり重要だといえます.tDCSはその感覚入力による可塑性変化を誘導できる可能性を秘めています.しかしながら,このtDCS未だ研究段階で臨床応用には様々なハードルを乗り越える必要があります.畿央大学健康科学部理学療法学科の松尾篤先生中心にtDCS研究が実施されておりますので,ぜひそちらもご覧ください.
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脳卒中患者の歩行障害に対するDual-channel FESの効果

Clin Interv Aging. 2013;8:271-7.
Dual-channel functional electrical stimulation improvements in speed-based gait classifications.
ScientificWorldJournal. 2012;2012:530906.
Effects of dual-channel functional electrical stimulation on gait performance in patients with hemiparesis.

今回の3本目、Bioness社の新しいFESであるDual-channel FESを用いた予備的な介入研究です。自宅使用での6週間の介入で麻痺側立脚期の割合がまし、歩行速度も向上したとのことです。この機器の詳細は以下のURLをご参照ください。紹介movieも見れます。http://www.bioness.com/L300_Plus_For_Thigh_Weakness.php

本邦ではようやく去年フランスベッドさんが輸入販売を始めておられます。

http://www.francebed.co.jp/brand_site/bioness/index.html

日本製ではOG技研さんとIVES+システムにセンサートリガーモードという簡易のFESシステムが搭載されています。

http://www.og-giken.co.jp/product/physiotherapy/GD611_mode.html

海外ではWalkaideという電気刺激オタクをうならせるこれまた優れたFESシステムがあります。

http://www.walkaide.com/en-US/Pages/default.aspx

にわかに今表面電極制御のFESが盛り上がっております。脳卒中ガイドラインでも推奨されている治療ですが、本邦で使用されている風景はまず見ません・・・。当研究会でも積極的に新たなFESについても研究し、従来の歩行リハビリテーションよりもより効果のある治療法を提案していきたいと考えております。

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二分脊椎症に対する理学療法 電気刺激療法の可能性

本日は大阪の村上整形外科にお勤めの西川先生にお越しいただき,二分脊椎症の理学療法の紹介と研究計画を提示していただきました.私自身二分脊椎症のお子さんは担当させていただいたことがなかったため,(研究会のメンバーもほぼなし)非常に貴重なデータの提示に大変興味深くとても勉強になりました.

二分脊椎症では損傷レベルに応じて獲得できる機能予後がおおよそ決まってくるそうですが,成人の脊髄損傷患者さんとは異なり,乳児期,幼少期の発達過程や成長に合わせての理学療法が独特でまた異なった問題点があるそうです.この病院では700例以上の実績があり,まさに経験に基づく理学療法の神髄を見せていただきました.

二分脊椎症では腹臥位や四つ這いなど十分な発達過程を経験できないことがあるためか,下肢体幹機能の成熟に遅れをとる場合があり,また,継続した筋力強化練習も困難な場合が多く,思うように筋力低下が改善しないことがあるそうです.

そこで,電気刺激を有効活用できないかというご相談をうけました.海外ではいくつか報告がありますが,まだまだ効果は未知数で検討すべき課題は山積しております.

研究会でも十分検討し,皆様に有益な情報を提供できるよう少しずつ臨床応用を進めていけると幸いです.

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大腿骨骨折後大腿四頭筋に対する神経筋電気刺激

Arch Phys Med Rehabil. 2002 Aug;83(8):1087-92.

Neuromuscular stimulation of the quadriceps muscle after hip fracture: a randomized controlled trial.

 
本日2本目は、大腿骨骨折後大腿四頭筋に対する電気刺激のRCTです。層化ランダム化ダブルブラインドのRCTと研究デザインはかなり強者ですが、今一つ電気刺激介入の理論的根拠にかける内容だと感じました。意味のあるポイントとしては、ホームエクササイズ1日3時間を6週間にて高齢者の患者さんでも副作用なく十分実施可能であったこと、6週間介入直後はSHAM(この研究では感覚刺激レベル)よりも運動閾値上刺激群のほうが筋力が改善していたこと(13週後も改善傾向持続も有意差なし)などが挙げられます。また、前ADLよりも回復した症例が電気刺激群に有意に多かったという結果は、シンプルかつ説得力のあるデータでした。
 回復期リハに所属している私ですが、骨折後急性期病院から直接自宅退院される方も多い中、回復期リハにこられる患者さんは超高齢であったり、合併症があったり、家屋や家庭の環境の問題があったりで、何かと問題をお抱えの患者さんが多い印象です。これだけ全国に病院がある中、かつリハビリテーションを提供している中、ciniiで「大腿骨骨折 理学療法」と調べてみるとわずか8件!!しかも、介入研究は1件のみ・・・。総説論文は山ほど引っかかりますが原著はやはり少ないのですね。
 
そんなことを思いながらpubmed surfingしていると面白そうなstudy protocolが!!あたりまえの極々シンプルな介入ですが、我々が当たり前におこなってることも効果のほどは実は科学的にきちんとした手続きで証明されておらず、シンプルなエビデンスを構築していくことも重要だと再認識しました。
 そこでまた原点回帰・・・臨床の問題点をさぐります。外固定術にてやはり多いのが大腿外側の痛み。中々患側立脚期時間が伸びず、歩容の異常は残存。この痛みの原因は?よくいわれる病態はあるのですが、はたして本当にそうなのでしょうか?末梢だけの問題なのか?介入の理論的根拠は?そこに物理療法が生かせる余地があるのか?可能性は・・・・・・あると思います。取り敢えずもう少し情報収集です。
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パーキンソン病患者に対する運動介入の有効性:レビュー

Mov Disord. 2008 Apr 15;23(5):631-40. doi: 10.1002/mds.21922.

The effectiveness of exercise interventions for people with Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis.

 
本日1本目は、パーキンソン病患者さんに対する運動療法のシステマティックレビューとメタアナリシスです。おそらく理学療法士じゃない方が書かれているのか、健康増進的な視点で、どういった運動介入がいいのかというまとめ方です。理学療法も一つの運動介入ととらえられています。Foxらはパーキンソン病患者さんに対する運動に関して5つの訓練原則を提唱しています;(a)集中的訓練によるシナプス可塑性を最大にする;(b)複雑な活動が大きな構造的適応を引き出す;(c)報酬のある課題はドーパミンレベルを高め学習を促進させる;(d)ドーパミン細胞は活動,非活動に非常に敏感である(use it, or lose it);(e)早期段階で運動介入を行えば進行を遅らせることが可能である。レビュー自体はシンプルなものだったのですが、あとで読み返してみるとん??と思うことが・・・。まず身体機能について。UPDRS等をoutcomeにしているのですが、もっとも効果量が高かったのは、体幹筋力増強+有酸素運動介入、ついでPT+BWSTT、PT+投薬治療、あまりコントロールと変化ないのが在宅理学療法でした。体幹筋力増強+有酸素運動介入はPTの一環としてされています。PTは気功よりわずかに効果量が高いようです・・・。どうやらPTは身体機能を上げるには有効なようです。一方、QOL(SIP、PDQ39、EQ-5D)はどの介入もコントロールと比べるとわずかに良いようですが、在宅理学療法がもっとも高い結果となっていました。メタアナリシスの解釈は気を付けなければなりませんが、ある意味臨床と合致するところはあるなと感じました。様々な問題を抱えるパーキンソン病患者さんにとって運動療法介入単独では限界があると思います。上記の結果からもわかる通り、たしかに身体機能は上がります。それだけで十分なのでしょうか?リハビリテーションチームで解決しなくてはならない問題とは一体何なのでしょうか。その中で理学療法士が責任をもって介入しなくてならない問題とは何なのでしょうか。ふと考えされられるディシジョンツリーでした。ともあれ、PTとして身体機能・動作能力を上げることはもっと突き詰めないといけない!!!
 そこで一度シンプルに振り返ります。立ち上がり。これを改善したい。殿部離床時に後方重心となり伸展相で後方に転倒し着座してしまうというよく遭遇する問題点です。前方に手がかりをおいてみる。荷重フィードバックにて前方重心をフィードバックさせる。それぞれ視覚、聴覚、体性感覚などのフィードバックを繰り返し練習することで改善させる。症例の動画を見ながらdiscussionしました。PDの病態からなぜこうなるのか?これらフィードバックは本当に自動化につながるのか?最近のneuroscienceの知見から新たな介入が浮かびそうな予感もありますが、中々ピカンと発明しない今日この頃です。
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マイクロカレント(微小電流電気刺激)

2本目は和歌山国際厚生学院の北裏先生によるマイクロカレント Micro-current electrical nerve stimulation MCENS,MENSのレビューです。MCENSは1960年代、動物の軟部組織の治癒は四肢の再生を根拠に開発され、損傷電流と呼ばれる損傷部位が電気的に負の状態になる理論を応用したものです。その強度は1Aの1000分の1のさらに下、数十~数百μAです。ですので、知覚することはほとんどありません。直流の場合、陽性電極直下では負の電荷を帯びているマクロファージや白血球などが遊走し、陰性電極下では正の線維芽細胞が遊走するとされております。その他基礎研究でも多くの生理作用がうたわれてますが、未だはっきりしない点が多いのも事実です。(私が無知なだけかもしれませんが・・・)。その臨床応用は、難治性の褥創にたいして、THA,TKAのope後の創傷治癒に、足関節捻挫に対して炎症の軽減と組織の早期回復などに使用されています。中でも難治性の下肢静脈潰瘍に関しては従来のドレッシングや圧迫に加えてMCENSの使用にて治療効果の促進やcost-effectiveな点が報告されています。遅発性筋痛に対してもいくつか効果のあった報告があり、どうやら創傷治癒促進に効果的なようです。一方、鎮痛効果については未だ不明な点が多く、その作用機序もはっきりしません。いずれにしても臨床応用やRCTも少なく、エビデンスも乏しい状況ですが、今後より明確な基礎研究やより科学的で良いデザインの臨床研究の報告が待たれるのと、基礎と臨床を継ぐTranslational Researchが課題といったところでしょうか。実際PT分野というよりエステや整骨院、スポーツ現場でよく使用され、市販されている機器も多数あります。電流が小さいのである意味完璧なプラセボが確立できます。理学療法においてどういった分野で活用できるのかについてはまだまだ研究が必要なようですが、臨床に定着していくためにはやはりある程度の作用メカニズムと明確な臨床効果を兼ね備えたサイエンスベースドな結果が求められると思います。

<参考文献>

J Wound Care. 2011 Oct;20(10):464, 466, 468-72.

Modelling the cost-effectiveness of electric stimulation therapy in non-healing venous leg ulcers.

Taylor RR, Sladkevicius E, Guest JF.

 

Middle East J Anesthesiol. 2009 Oct;20(3):411-5.

Effect of microcurrent skin patch on the epidural fentanyl requirementsfor post operative pain relief of total hip arthroplasty.

Sarhan TM, Doghem MA.

 

Pain Med. 2011 Jun;12(6):953-60. doi: 10.1111/j.1526-4637.2011.01140.x. Epub 2011 May 31.

Microcurrent transcutaneous electric nerve stimulation in painful diabetic neuropathy: a randomized placebo-controlled study.

Gossrau G, Wähner M, Kuschke M, Konrad B, Reichmann H, Wiedemann B, Sabatowski R.

 

J Appl Behav Anal. 1998 Fall;31(3):493-6.

Reductions in self-injury produced by transcutaneous electrical nerve stimulation.

Fisher WW, Bowman LG, Thompson RH, Contrucci SA, Burd L, Alon G.

 

Rehab Manag. 1991 Feb-Mar;4(2):34-5.

Microcurrent therapy; wave of the future?

Wieder DL.

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ヘルペス後神経痛に対するTENSとプレガバリン

Clin J Pain. 2010 Sep;26(7):567-72. doi: 10.1097/AJP.0b013e3181dda1ac.

Pregabalin and transcutaneous electrical nerve stimulation for postherpetic neuralgia treatment.

本日1本目はヘルペス後神経痛PHNに対するプレガバリンとTENSの鎮痛効果に関する論文です。今や5-6人に1人はヘルペス(帯状疱疹)にかかるとされており、皮膚症状から重症となるとさまざまな重篤な合併症を引き起こす疾患です。胸部や腹部、顔面、四肢のあらゆる部位に発症し、急性痛はおよそ2-3週間続きます。徐々に自然治癒で痛みも消えていきますが、炎症が強い場合、神経損傷に伴って痛みが慢性的に続く慢性神経痛に移行します。痛みの程度はさまざまですが、臨床でも耐え難い痛みを抱えておられる症例もよく経験します。その出現率は25%との報告もあり、PHNのQOLの低下は大きな問題となっています。現在のところ治療の中心は薬物療法で、三環系抗うつ薬、オピオイド、トラマドール、ガバペンチンなどがあり、近年はプレガバリンがよく使用されています。プレガバリンは過剰に興奮した神経において、そのカルシウムイオンチャネルのα2δサブユニットに結合して神経伝達物質の放出を抑制する薬理があり、効果発現が早く、長期投与の減衰も少ないことが挙げられています。一方、TENSは伝統的なゲートコントロールや内因性オピオイド、疼痛閾値の増大や感覚可塑性変化などさまざまな効果があるとされています。難治性のPHNに対してこのメカニズムが違う2つを組み合わせてみてはどうかという論文です。デザインはplacebo-RCTで安静時VAS60mm以上のヘルペス発症後3か月経過し、疼痛やアロディニアがある患者さんです。介入は4週間、投薬治療とTENSを実施されました。投薬はプレガバリンを調整し、24hで300mgと600mgの群にサブグループに分けられ、それぞれplaceboとTENSを受けました(計4群、n=30)。その結果、もっとも効果があったのは600mg+TENS群で、その鎮痛効果は40%(最終平均VAS25mm)、次いで300mg+TENS群、そして600mg+placebo、300mg・・・でした。なんとTENSが投薬並の効果がある可能性が示されたわけです。VAS同様、夜間時痛やマクギル、QOLも同様の結果でした。TENSのパラメータについては表記が怪しかったのですが、20msの矩形波、50Hzのバースト?で30分間に強度も変調させたとありました。電極設置部位は神経痛部位周辺です。作用機序の詳細は不明ですが、臨床効果は投薬並??かもしれません。副作用もほとんどないですし、安全ですので、もしPHNでお困りのかたがおられましたら主治医と相談し、検討してみてもよいかもしれません。まだ未発表データなのでここでお話しできませんが、当研究会のテンス徳田が今年度の日本理学療法学術集会でPHNに対するTENSの効果についての症例報告を発表予定ですので、ご興味ある方は是非ご一読を!!
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経皮的脊髄直流電気刺激

Front Psychiatry. 2012;3:63. doi: 10.3389/fpsyt.2012.00063. Epub 2012 Jul 4.

Transcutaneous spinal direct current stimulation.

新年最後はこれまた難解な経皮的脊髄直流刺激です。これは大脳へのtDCSと同じく,脊椎のところに直流刺激をあてるという方法で,これにより健常者において後脛骨神経からのSEPsが減少したり,疼痛ー熱刺激の指標であるレーザー誘発電位が抑制されたりすることが示されています。このメカニズムについてはまだ不明な点が多いのですが(お決まりの文句)簡単にかつ非侵襲的に実施可能という点から,難治性の四肢痛に投薬などの補完治療として期待されています。painだけでなく脊髄サーキットのmodulationも可能とされており,H反射の増大なども報告されているそうです。この生理現象を臨床にどう生かしていくかがポイントでしょうが,まずこのあたりの生理学ももう少し勉強しないといけないと個人的な反省。。。です。。。まだコメントできるほど知識もありませんので,少しずつ理解を深めていきたいと思います。
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pusher behaviorに対する直流前庭刺激

「あらゆる姿勢で麻痺側へ傾斜し、自らの非麻痺側上下肢を使用して、床や座面を押して、正中にしようとする他者の介助に抵抗する」(Davies, 1985)

これまた理学療法の永遠のテーマであるPusher syndrome,Contraversive pushing,pusher behaviour(PB)であります。急性期症状で3か月以内に消失するものが多いとされ,予後はよいとされていますが,臨床では残存する方も多く経験するところです。PBの存在は予後を悪化させるという報告があります。右半球損傷者が重症化しやすく,病巣は右半球では視床後部,島皮質,中心後回,下前頭回,中側頭回,下頭頂小葉などが関連するとされています。そのメカニズムは,身体軸の偏位,自覚的視性垂直位SVVの偏位,空間無視の存在,視覚、前庭覚、体性覚とは異なるsecond graviceptive systemの存在など多要因であります。その中で,前庭機能と関連するという報告があり,われわれはここに注目しています。前庭刺激には頭部の位置変化や姿勢変化などのほかにカロリック刺激やGVSなどがあります。GVSは非侵襲的に容易にかつ意図する方向への前庭系への調整が可能です。GVSによりSVVを操作することも可能とされており,PB患者の治療に応用できる可能性があります。まだまだ問題は山積みですが,数例に実施したところいい印象で患者さんの受け入れも悪くなく,今年の全国学会ではその一部を発表できるかと思います。ここ何十年とPBの治療に大きな変化はありません。GVS単独ではなく,その前庭刺激作用を上手く利用して効果的な理学療法につなげることができればと考えております。

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非特異的腰痛に対するTENS vs 干渉波の効果

Sao Paulo Med J. 2011;129(4):206-16.

Effects of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) and interferential currents (IFC) in patients with nonspecific chronic low back pain: randomized clinical trial.

 
今週は気合の入った3ネタでございます。まずは非特異的腰痛に対するTENS対IFC(干渉波)です。慢性の非特異的腰痛は理学療法にとっても永遠のテーマといれるほど合併されている患者さんが多いと思われます。現在のエビデンスでは,TENS等ポジティブな結果がある程度報告されていますが慢性期には推奨されていません。マニュアルセラピーは相反するエビデンスがありますが,患者教育や運動療法はポジティブな結果が多いようです。そこで,鎮痛目的にTENSを・・・というわけですが,現在臨床でも干渉波電流IFCという機械が多く用いられているかと思います。干渉波は異なる2つの中周波帯域の周波数を掛け合わせることで,その間に干渉電流と呼ばれる電流が生じる。これは従来の低周波TENSと比較して,中周波のため皮膚のインピーダンスを抑えれるため皮膚刺激感覚を減少させることができるというメリットがあるといいます。そんなわけで,ぶっちゃけどっちがいいのかというきわめてクリニカルな研究ですが,結果はTENSとIFCとどちらも効果はほぼ同じで,コントロール(患者教育)群よりは有意に改善したとのことです。しかもNSAIDsの使用量もへったそうです。2週間10セッションの効果を見てますが,VAS平均50から10くらいまで低下してます。これって効果ですぎなのではと思うくらいきれいなデータでしたが,今回のinclusionの非特異的腰痛のくくりがさまざまであり,何が良かったのか,なぜ同等の効果であったのかは不明確な点が数多く残されています。非特異的腰痛自体原因がはっきりしないのでよくわかりませんが,あくまで物理療法は理学療法と一部としてとらえるべきであり,少しでも腰痛を軽減させてエクササイズや患者指導,認知行動治療に移行するべきかもしれません。でないと電気依存症になってしまいますので真のゴールからは外れてしまいます。慢性の非特異的腰痛は近年心理社会的な対策も踏まえて考えていくべきとされていますので,物理療法を含め,腰痛も多角的な視点で介入していく必要があるのだと思います。
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脳卒中後下垂足に対するFES vs AFO

J Rehabil Med. 2012 Jan;44(1):51-7. doi: 10.2340/16501977-0909.

Effects of an implantable two-channel peroneal nerve stimulator versus conventional walking device on spatiotemporal parameters and kinematics of hemiparetic gait.

最近少なくなった埋込みFESとAFOにて歩行の運動学的パラメータが約6か月後どう変化するかのRCTです.結果はFES群のほうがAFO群に比べて麻痺側のstanceやdouble suppportが正常に近づいたとのことですが,有意差ありもその差は数%と微妙な差でした.この論文では実際の理学療法はどの程度実施されていたのか不明でしたが,FESでは背屈を補うことで新たな(というか従来持ってた)機能を再獲得するわけで,再度パフォーマンス学習が必要なのではと思います.より効果的な動作練習を加味すればもっと効果がでるだろうにと単純に思いました.物理療法系の研究全般に言えることですが,今我々に求められているのは物理療法を効果的に加えた運動療法,すなわち「理学療法」の効果ではないかとシンプルに思います.物理療法はさまざまな疾病や障害を抱えた方にベストなコンディションにするための補助的ツールである場合が多いかと思います.そう考えれば適応はかなり広がりますし,もっと臨床効果もあがるでしょうし,物療を気軽に用いていただけるのかもしれませんね.話は大分それましたが,けっこう細かい視点の研究も多くそれはそれで重要なことですが,もっとシンプルな,クリニカルな,実践的なわかりやすい臨床介入研究が増えれば物理療法学会のみならずPT学会も盛り上がるのではと・・・改めて思いました.けどそれって簡単そうで難しいんですよね.その答えは臨床にあるはず!!,今日同僚との何気ない患者さんの問題点に関するdiscussionで一つの疑問と現状の問題点に気づきました.こういったものを大切にして,そして究明していかなくてはならないということでしょうか・・・
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脳卒中後上肢機能障害に対する経頭蓋直流刺激のレビュー

J Hand Ther. 2012 Sep 7. [Epub ahead of print]

A Meta-analysis of the Efficacy of Anodal Transcranial Direct Current Stimulation for Upper Limb Motor Recovery in Stroke Survivors.

 
脳卒中後上肢運動回復に関してM1への陽極直流刺激の効果をメタアナリシスした論文です.2012年5月までの論文をデータベースから集め,両側刺激や対側陰極刺激を除いた8研究が対象となりました.Sham条件と比較して,Jebsen-Taylor hand function testやReaction time, pinch strength, box and block testのエフェクトサイズを見ると,SMDが平均0.49と中等度の効果量でした.PEDroスコアは高い研究ばかりでしたが,サンプルが多くて13/13,介入はほとんどsingle session, follow-upもなし,ADLやQOLへの汎化もあまり検討なし,まあとりあえず研究室ベースの研究が多いとのことです.また,方法論やアウトカムの統一やその種類も課題ありです.臨床的なpragmaticな研究は最近ちょくちょく報告されていますが,rTMSと効果量は大きく変わらないような気がしてます(ほとんどの研究がpre-postで20%前後!?).私自身は中等度から重度の上肢運動障害の方に対して何らかの応用ができないかと強く思っています.そのためにはtDCS単独単発ではダメで,組み合わせる運動療法やその組み合わせ方,治療計画を含むプログラムの進め方,当然病態に合わせた対応なんかが重要だと思っています.どんな治療法もそうですが最終的に永続的な変化にもっていかないとあまり意味はないと思いますので,tDCSで可塑性を誘導した状態で適切な課題,文脈,量によって長期増強に導く・・・.とは言うものの脳はそんな単純ではないわけで,当然興奮もあれば抑制もあり課題によっても行動によっても企図によっても軌道によっても活動パターンは変わるわけで,本当にM1上にオンラインで陽極刺激だけでいいものか,どういった運動療法や他の治療モダリティーとどのようなタイミングで組み合わせるのがベストかを考えていかないといかないのかなと思います.そうでないと組み合わせ方によっては逆効果も考えられますし,現に健常者であればパフォーマンスがかえって低下する報告もされています(畿央大松尾先生論文参照).しかしながら,tDCSはTMSよりかは格段に安全で安価というメリットがあります.一方で,安全性に関してもまだまだ不明な点はあります.そんな中,未だFDAや薬事法でも認可されていない現状を考慮し,上肢とくに手指の機能改善を目指して将来を見据えたきちんとした研究計画のもと研究を進めていく必要性を感じました.「運動と脳」をもう一度読み直します・・・
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運動器疾患における抵抗運動のレビュー

Br J Sports Med. 2012 Aug;46(10):719-26. Epub 2011 Jul 26.

Resistance training in musculoskeletal rehabilitation: a systematic review.

運動器リハにおけるレジスタンストレーニングのレビューです。理学療法において物理療法と運動療法を併用することは非常に重要ですが,運動療法も同時にアップデートしていかないとせっかくの併用治療も意味ありません。というわけで,運動療法について最近の知見をおさらいすることにしました。レジスタンストレーニングは効果が高いことは明々白々ですが,理論的にはわかっていても現実臨床できちんとシステマティックにされているところは少ないのではないでしょうか?なかなか高齢や痛みがあったりで実施しにくいことも多いですが,通常のトレーニングよりも筋力,ADL,QOLへの効果が高いわけですから,やっぱり意識的に臨床に導入していかなくてはなりません。だいたい統一して使用している負荷量は1RMの60-80%です。80%以上は特に膝OA患者さんには痛みを増悪させたり,軟骨破壊を助長する可能性があるそうで,一方効果的であったという話もあります。
いずれにしても,また疾患によって最適なトレーニング方法,量,頻度,強度はまだまだ議論の余地があるとのことです。ちなみにciniiで変形性膝関節症で抵抗運動は0件,筋力強化,増強でも20件以下・・・さらに理学療法関連雑誌は2件,総説がほとんど。うーん,今日本の理学療法で実施されている筋力増強って効果出ているのでしょうか?というか筋力にきちんとアプローチできているんでしょうか?自然回復より有意に結果出ているのでしょうか?むしろ患者さんが自主トレでよくなっているのではないでしょうか?より筋力を高めるにはどうすればよいのでしょうか?今の方法で本当に満足なんでしょうか?私たちがしなくてはならないことは何なのでしょうか?
と自分に言い聞かせ,きちんと臨床に取り組み,臨床的問題点を発見していきたいと思います。
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脳卒中患者の歩行の協調性の回復に関するFESとトレッドミル,床上歩行練習の効果

Neurorehabil Neural Repair. 2011 Sep;25(7):588-96. Epub 2011 Apr 22.

Recovery of coordinated gait: randomized controlled stroke trial of functional electrical stimulation (FES) versus no FES, with weight-supported treadmill and over-ground training.

ClevelandでのFESで有名なDalyさんの研究。デザインはSingle-blindの6か月フォローアップ研究で,埋め込みFES+1.5時間のトレッドミルと床上練習群,no FES群のRCTです。介入は週4回の12週間で結構なintensiveなトレーニングです。メインアウトカムはG.A.I.Tという評価でまだ詳細は読めていませんが,おそらく歩行の動作分析的要素を含んだ順序尺度の評価のようです。その他は,筋力,Fugl-meyer,6MWT,FIMでした。結果は,G.A.I.TがFES群が有意に改善し,6か月後もその改善をキープしていたことでした。その他,群内比較ではFES群,no FES群とも前後で有意に改善していたとのことです。
今週の吟味はまず対象者のbaseline時の6MWTが平均530mとのこと。これは何かの間違いかというくらいの好記録です。さらに4週間で2群とも100-200m改善したと・・・恐ろしい。今回の目的は歩行の協調性が変わるかとのことでしたので,結果は変わったのでバンザイ。しかし,やはり下肢はむずかしいのか,8チャンネルのコンピュータシステムの埋込みFESというこれ以上末梢からの電気では与えようのない完璧に近い機器でけっこう介入したにも関わらず,劇的な変化とまではいかなかったようです。この論文もそうですが,最近私が思うのは,機器の効果をみるためにトレッドミルでも電気でもロボットでも介入を統一された研究が多いですが,やはり患者さんの歩行障害の問題点は様々なわけで,トレッドミルでは背屈筋を促通するのは難しいし,電気でダイナミックな動作や遊脚改善のための腸腰筋の刺激も難しいし,電気刺激もトレッドミルもどういった患者さんのどういった問題点にどう使用すればもっとも効果的かどうかという研究をしていくべきPhaseに来ているのではないかなと思います。そうなれば研究としては難しくなるのですが,実際臨床には一番大事な要素でして,ぜひとも当研究会でも実践していければと強く思いました。
しかしながら,この研究,日本ではまずまねできそうにない重厚なデザインでした・・・
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脳卒中後歩行障害に対する中殿筋への電気刺激-予備研究-

つづいて当研究会メンバーである和歌山国際厚生学院 福井直樹先生の研究報告。

福井先生は現在,脳卒中後の歩行障害に対する中殿筋への電気刺激の効果を検証しようとされておられます。とある疫学データでは脳卒中患者の約35%が下肢運動麻痺から実用的な機能まで回復することができず,20~25%の患者が物理的な介助なしでは歩行することができないとされており,脳卒中後歩行障害の改善は我々理学療法士にとっても大きな命題の一つです。脳卒中患者さんの歩行障害の原因はさまざまですが,より生活に密着した問題となりうるのが歩行速度の低下や安全性の低下です。中でも股関節外転筋の活動の低下は麻痺側下肢の立脚期の安定性に大きな影響を与え,非対称性の主な原因となったり,歩行速度との関連が指摘されています。一般的に,電気刺激は下垂足drop footを改善する目的で前頚骨筋(あるいは総腓骨神経)に実施される場合が多く,本邦のガイドラインやEBRSR(http://www.kio.ac.jp/~a.matsuo/:日本語版)でも推奨されていますが,中殿筋に実施している研究はほとんどないのが現状です。しかし,近年までのFES研究を踏まえると中殿筋の筋活動も改善できる可能性が大いに考えられます。

まだ予備的研究の段階ですが,順次良い結果を報告できればと考えております。

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経頭蓋直流刺激tDCSは麻痺肢の運動スキル習得に影響を与えるか?

Stroke. 2012 Aug;43(8):2185-91. Epub 2012 May 22.

Modulation of training by single-session transcranial direct current stimulation to the intact motor cortex enhances motor skill acquisition of the paretic hand.

 
本日の英文抄読1本目。Strokeのonline firstの分ですが,脳卒中患者さんの麻痺側上肢の運動系列動作学習が非損傷半球M1への陰極経頭蓋直流刺激tDCSによって修飾されるかどうかを検討した研究です。対象者はかなり軽度の運動麻痺でした。(系列運動はキーボードをとある順番で打つという課題なので)ダブルブラインドのRCTで,1セッションのtDCS(20min)中?に5 blockの練習,90分後に再評価+4block, 24時間後再評価+4blockというようなdesignでした。結果は,系列運動の正当数がSham刺激と比較してtDCS群が90分後22%の改善,24時間後も平均19%の改善を維持していました。経頭蓋磁気刺激TMSを用いた評価では短時皮質内抑制の変化と課題の改善率と正の相関が認めました。つまり,tDCSは早期にオンライン(課題実施中の)学習の改善を促進させた,かつ24時間後も続いていたとされ,スキル獲得に寄与するのではとのことです。tDCSの介入効果は即時的に筋力が改善したり,機能パフォーマンスが改善したりと近年さまざまな研究が報告されています。この研究は,脳卒中患者さんの運動学習をも促進させる可能性を示したおそらく初めて?の報告になります。いわゆる半球間抑制メカニズムにより麻痺肢の学習が阻害されている場合があるのであればこの方法はそれを変調させるツールになるかもしれません。あくまで慢性期の患者さんなので,これが急性期,回復期の方に適応できるかは疑問がのこりますが,新規の系列動作の学習効率がすすむ可能性が示されたのは面白い結果だと思いました。たとえば,入院リハにおいて車イスからの移乗動作習得における学習などに応用できるかもしれません。まあ正確には単純な系列運動とは言えないので研究結果をそっくりそのまま応用するのは無理がありますが・・・。tDCSにおいても日本では薬事法で認可されておらずまだ臨床で使用することは困難ですが,近年ものすごいスピードで研究数が増えてきております。いずれ臨床応用される日も近いかもしれません。個人的には,シンプルに理学療法効果を高めるような使い方ができないかと思っています。事前にtDCSを加味することで運動スキル学習の改善が少しでも早くなれば,最終的に標準的なリハよりも早く在宅や社会に復帰できるかもしれません。直流刺激という点で皮膚のかぶれややけどなどのリスクが懸念されますが,TMSよりも圧倒的にリスクは低く,コストも安いです。頭痛などの副作用も報告されていますが,いまのところ重篤なものは報告されていません。欧州ではすでに家庭用のtDCS装置も販売されていると聞きます。日本でもはやく効果が明らかにされて臨床応用されればと思いますが,そのためには地道な研究が必要ですね。
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パーキンソン病患者に対する間欠性シータバースト刺激の効果

Neurology. 2011 Feb 15;76(7):601-9.

Intermittent theta-burst transcranial magnetic stimulation for treatment of Parkinson disease.

本日論文3本目。今月はちょっとやりすぎましたか?みなさんヘトヘトでした。しかも濃い内容ばかり。最後は究極でしたが(笑)。パーキンソン病患者さんに対するシータバースト刺激です。これは,rTMSの派生みたいなもので,脳波から観察されるシータ波と呼ばれる5~10Hzのリズムで短い連続刺激を繰り返すと,長期増強LTPが効率よく誘導できるそうです。これはもともと動物実験で海馬から生じる波形からスタートしているようですが、近年脳卒中患者さんにも応用されたりしています。rTMSよりも安全でより理にかなった方法のようで、M1興奮性の増大なんかを誘導できるそうですが、実際体験したことないのでわかりません。 運動閾値TMSは体験しましたが,あまり気持ちの良いものではありません(笑)
この研究では、メインアウトカムを10m歩行時間としていますが、なぜかM1手指領域と背外側前頭前野DLPFCに実施しています。結果は、10mやUPDRSには有意な変化がなく、抑うつが改善し、手指の寡動が改善傾向にあったそうです。DLPFCへのrTMSは欝に対する方法として多く実施されていますが、それら先行研究通り気分が改善したようです。しかし、歩行はshamと比較して有意差なし。当然歩行であればM1下肢体幹領域に刺激するほうが良いのでしょうが、現実問題として困難なのか実施しておられませんでした。脳卒中患者の下肢運動障害に対するrTMSの報告も現状ほとんどないと思います。リスクのほうが大きいからでしょうか。半球間抑制メカニズムとはまた違う理論根拠になるからでしょうか。
パーキンソン病患者さんの場合では、その病態から考えてtDCSをFESのように使用したほうが気軽で効率的で臨床的に良いように思います。ヘルメットをかぶりながら(少し現実的ではないかもしれませんが)刺激するという感じです。皮質に抑制がかかっているような状況の中で、TMSのような刺激でいくらM1などの興奮性を高めても内発的運動にブロックがかかるような状況であれば実際の動作としては発現しにくいと考えられます。その点、tDCSをFESのように使えればoffのときにスイッチを入れるなどの工夫で運動発現を少しでも改善できるのではないでしょうか??ただし、直流刺激では長時間使用するとやけどやかぶれのリスクが上がるので、パルス波やon/offを設けるなどの工夫が必要かもしれません。そのうち研究が出そうな気がします。
と今月の物理医学系リハ研究会はここまで。
皆様お疲れ様でした。コメントいただけると幸いです。
当日話せなかったことなどディスカッションに役立ててください。
では、来月もよろしくお願いいたします。
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運動イメージ+筋電誘発電気刺激は皮質変化をさせるか?

Stroke. 2012 Sep;43(9):2506-9. Epub 2012 Jul 12.

Cortical changes after mental imagery training combined with electromyography-triggered electrical stimulation in patients with chronic stroke.

本日2本目論文。慢性期脳卒中患者さん14名に対して心的イメージ練習と筋電誘発型電気刺激(MIT-EMG)を組み合わせた練習を1回20分の治療を1日2回,週5回4週間実施してます。結果,MIT-EMG群においてFugl-Meyer上肢項目が有意に改善(平均29点→介入後7点変化)したと報告してます。MALやBarthel Indexは有意差なしでした。
当研究会の小嶌はミラーセラピー+筋電図誘発型電気刺激を実施しており,概ねポジティブな結果を報告しております。http://ci.nii.ac.jp/naid/40019327875 http://ci.nii.ac.jp/naid/10029929128 http://ci.nii.ac.jp/naid/40017271483
実施している内容のコンセプトはかなり似通っているのですが,細かい方法についてはつっこみどころ満載の論文です。コントロール群であるETMS実施群も全く変化していない所は他の研究と異なる点ですし,このデザインでは,ETMS単独よりもMITを付加した方がいいのか,MIT単独の効果でよかったのかが不明です。follow-upもなし。されど,PETで皮質変化を見ているという点でノイエスがあるのでしょう。しかし,contralesional motor–sensory cortexの代謝が増大したという点はやや疑問が残ります。どちらかというとこの治療のコンセプトからいくと,病巣側の賦活を狙ってると思うのですが,対側が賦活するようになったというのは,非病変半球からの出力が増大したということでしょうか?このあたりの考察はまったくされておりませんでしたが,半球間抑制メカニズムなどから考察するとん??と首をかしげてしまいます。しかし,STROKE・・・acceptまで約1か月半・・・何で(笑)。
当研究会からいずれSTROKEに論文が載る日を目指して・・・みなさん頑張りましょう!!
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fMRIによる中枢性疼痛機構に対するTENSの効果

Clin J Pain. 2012 Sep;28(7):581-8.

Functional Magnetic Resonance Imaging of the Effects of Low-frequency Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation on Central Pain Modulation: A Double-blind, Placebo-controlled Trial.

本日の勉強会1本目。TENSの効果をfMRIで見てみようという研究です。デザインはダブルブラインドのsham-controlled studyということでかなり気合の入ったデザインです。対象はインピンジメント症候群の患者さん20名で30分の低周波運動レベルTENSを有痛部位に実施しています。その結果,VASの低下を認め,fMRIでは対側の1次感覚皮質,両側尾側前帯状回,同側補足運動野の活動が減少したとのこと。このfMRIは他者の痛み表情を観察し得られたものをその活動として評価しています。実際のインピンジメント時の痛みをfMRIで撮影していないため,(現実不可能ですが・・・)あくまで間接的評価ですが,shamと比較して変化があるというのは面白い結果だと思います。しかし,気になるのが対象者のインピンジメント症候群罹病期間。1-24か月と差があります。それでは,脳内の疼痛の表象も急性期,慢性期で変わってくるような気がするのですが・・・。そしてこの前帯状回は注意,エラー検出,動機づけ,情動などさまざまな機能を有するところで,そこの活動が減少するというのは新たな発見で面白いと思いました。
TENSの疼痛抑制メカニズムについては,これまでゲートコントロールや内因性オピオイド理論などどちらかというと脊髄レベルまでの話が多かったですが,皮質レベルでの疼痛抑制理論はあまり聞いたことがありません。今後より発展する分野だと思います。
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ガン性疼痛に対するTENS

Cochrane Database Syst Rev. 2012 Mar 14;3:CD006276.

Transcutaneous electric nerve stimulation (TENS) for cancer pain in adults.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD006276.pub3/abstract;jsessionid=D39AA725F6C2E22AF144FDFA8A6E1B0F.d03t02

 

本日の英文抄読はこちら。ガン性疼痛に関するTENSについて,RCTの報告はかなり少なくて,現状3本程度。

現在がんのリハビリテーションの分野はかなり注目されており,理学療法士が身体機能やADLの向上に寄与できる可能性が示唆されてます。

理学療法士にとって大きな武器である電気刺激の中に,TENSという除痛のツールがありますが,

がんリハの分野ではあまり実施されていません。そもそもガン性疼痛の疼痛管理は投薬が主体ですが,投薬による副作用の問題が付きまといます。そこで,TENSの出番です!!TENSによる鎮痛により投薬量を減らす可能性があります。

しかしながら,まだどういった疼痛に,時期に,部位に,どんなパラメータで,どれくらい,どの程度継続すれば,疼痛が緩和されるのは,まだまだ検討しなくてはならない点が山積みです。

少しでも疼痛が緩和できて,かつ自宅で利用できて,セラピストが電気の調整を行いながらできるだけ投薬量をへらし,運動を確保できればADLやQOLの向上に寄与できるのではと考えております。

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